性的ディープフェイクは犯罪になる?NSFW生成AIの法律とリスクを解説
画像や動画、文章を自動でつくる生成AIは、性的なコンテンツの世界にも急速に広がっています。成人向けの生成AIサービスやAIキャラクターとの会話サービスが増える一方で、実在の人物の顔を使った性的な偽画像「性的ディープフェイク」が深刻な社会問題になっています。この記事では、NSFW(職場閲覧注意)生成AIをめぐる日本と海外の法律、利用する側が知っておくべきリスクを解説します。
いちばん大きな問題は「性的ディープフェイク」
性的ディープフェイクとは、実在する人の顔写真などをもとに、その人が性的な行為をしているように見せかけた画像や動画のことです。かつては専門的な技術が必要でしたが、生成AIの普及で、誰でも短時間でつくれるようになりました。
被害を受けるのは有名人だけではありません。SNSに載せた写真などをもとに、身近な一般人が標的にされる事例が国内外で報告されています。画像が偽物であっても、一度ネットに広がれば完全に消すことは難しく、被害者は深い精神的苦痛を受けます。実在の人物の性的な画像を、本人の同意なくつくること・広めることは、どんな理由があっても許されない行為です。
日本の法律ではどうなる?
2026年時点で、日本には性的ディープフェイクそのものを直接取り締まる法律はありません。ただし、つくったり広めたりすれば、既存の法律で罪に問われる可能性があります。
- 名誉毀損罪・侮辱罪:実在の人物が性的な行為をしているかのような画像を公開すれば、その人の社会的評価を下げるものとして処罰の対象になりえます。2020年には、有名人の顔を合成したわいせつ動画をネットで公開した人が、名誉毀損と著作権法違反の疑いで逮捕されています
- 著作権法違反:もとになった写真や映像を無断で使えば、著作権侵害になることがあります
- わいせつ物頒布等罪(刑法175条):AIでつくった画像でも、わいせつな画像を不特定多数に配布・公開すれば処罰の対象になります。つくり方がAIかどうかは関係ありません
- 民事上の責任:肖像権やプライバシーの侵害として、損害賠償を請求されることがあります
一方で、実際に撮影された性的画像の拡散を処罰する「リベンジポルノ防止法」(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)は、実在の撮影記録を前提にしており、AIでつくった偽画像にそのまま適用できるかは議論があります。こうした「法律のすき間」を埋めるための法整備や、自治体による条例での規制の検討が進んでいます。
海外では規制が進んでいる
- アメリカ:2025年5月に連邦法「TAKE IT DOWN Act」が成立し、AIでつくったものを含む同意のない性的画像の公開が犯罪とされました。SNSなどのプラットフォームには、被害者からの申請を受けて48時間以内に削除する仕組みが義務づけられ、2026年5月から運用が始まっています
- イギリス:2023年のオンライン安全法で、ディープフェイクを含む性的画像を同意なく共有することが犯罪とされました
- 韓国:性的ディープフェイクの被害が相次いだことを受け、2024年に法改正が行われ、性的ディープフェイクを所持・視聴することも処罰の対象になりました
- EU:AI法(AI Act)で、ディープフェイクであることを明示するよう求める透明性の義務が定められ、2026年8月から適用されています
海外のサービスを使っていても、日本国内で画像をつくったり広めたりすれば日本の法律が適用されます。また、海外の法律の対象になる可能性もあります。
利用する側が知っておきたいリスク
成人が架空のキャラクターや自分自身のための成人向けコンテンツを楽しむこと自体は、各サービスの規約と法律の範囲内であれば個人の自由です。ただし、次のようなリスクがあります。
アップロードした画像や会話は残る
生成AIサービスに送った写真や入力した文章は、サービス側のサーバーに保存され、AIの学習に使われたり、情報漏えいで流出したりする可能性があります。とくに自分や他人の顔写真、個人が特定できる情報は入力しないでください。利用前にプライバシーポリシーを確認し、提供元がはっきりしないサービスは避けるのが安全です。
「無制限」をうたうアプリや詐欺
「規制なし」「何でもつくれる」とうたう非公式のアプリやサイトの中には、マルウェア(不正なプログラム)が仕込まれていたり、高額な課金に誘導したりするものがあります。サービスの規約や安全のための制限は、利用者や第三者を守るためのものでもあります。
AIキャラクターへの依存
AIのキャラクターと恋愛的・性的な会話を楽しめるサービスも増えています。孤独感がやわらぐという声がある一方で、のめり込みすぎて睡眠や生活、人間関係に支障が出たり、課金がやめられなくなったりする人もいます。「やめたいのにやめられない」と感じたら、使う時間や金額に上限を決める、身近な人や専門家に相談するなど、早めに距離のとり方を考えてください。
もし被害にあったら
自分の性的ディープフェイクがつくられた、広められたと気づいたら、ひとりで抱え込まずに相談してください。
- 証拠を保存する:画像が載っているページのURLやスクリーンショット、投稿者の情報を記録しておきます(自分で拡散しないよう注意)
- プラットフォームに削除を依頼する:多くのSNSや画像サイトには、同意のない性的画像の通報窓口があります
- 警察に相談する:警察相談専用電話 #9110、または最寄りの警察署へ
- 専門の相談窓口:性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)、法務省「みんなの人権110番」(0570-003-110)など
被害にあった側に落ち度はありません。精神的なショックで眠れない、気持ちが落ち込むといった状態が続く場合は、心療内科や精神科で相談することもためらわないでください。
まとめ
- 実在の人物の性的ディープフェイクは、日本でも名誉毀損などの罪に問われる可能性がある重大な加害行為
- 海外では、同意のない性的画像を直接処罰する法律の整備が進んでいる
- 成人向け生成AIを使うなら、個人情報や他人の写真を入力しない、提供元が不明なサービスを避ける、のめり込みに注意する
技術は急速に変わり、法律もそれに合わせて動いています。このサイトでは、AIと性をめぐる動きを、医学・法律・倫理の視点から今後も取り上げていきます。
参考資料
- ITmedia NEWS「“ディープフェイクポルノ”初摘発」(2020年10月)
- Congressional Research Service「The TAKE IT DOWN Act」
- FTC「Take It Down Act enforcement starts now」(2026年5月)
- CBS News「South Korea to criminalize possessing or watching sexually explicit deepfake videos」
- European Commission「Guidelines on transparency obligations」(AI法50条)