アムステルダムの飾り窓とは?仕組み、ルール、変わりつつある「赤線地区」
オランダの首都アムステルダムの旧市街には、赤い照明に照らされたガラス窓の向こうに下着姿の女性が立ち、通りを行く客と交渉する「飾り窓」と呼ばれる一角があります。世界で最も有名な赤線地区のひとつで、観光名所としても知られてきました。しかし近年、この地区は大きな転換期を迎えています。この記事では、飾り窓の仕組みとルール、オランダの法制度、そして変わりつつある街の現状を解説します。
どこにあり、どう成り立っているのか
飾り窓が最も集まっているのは、アムステルダム中央駅の南に広がる旧市街の一角で、地元では「デ・ワレン」と呼ばれます。運河沿いに古い建物が並び、教会や住宅、カフェのすぐ隣に飾り窓がある、独特の風景です。港町として船乗りが集まった中世の時代から、この一帯には売春が存在していたといわれます。
飾り窓の仕組み
- 窓を借りるのは働く本人:セックスワーカーは、窓のある小部屋を経営者から時間単位(昼と夜のシフト)で借ります。店に雇われているのではなく、個人事業主として働くのが基本です
- 交渉は窓越しに:客が窓に近づき、ドアを少し開けて料金とサービスの内容を話し合います。合意すれば中に入り、カーテンが閉められます
- サービスは部屋の中だけ:部屋には緊急時に押す非常ボタンが備えられていることが多く、働く人の安全を守る仕組みがあります
- コンドームの使用が前提:オーラルセックスを含め、コンドームなしのサービスを断る人がほとんどです
オランダの法律
オランダでは、売春そのものは以前から処罰の対象ではありませんでしたが、2000年に売春宿の禁止が撤廃され、自治体の許可を得た施設での営業が合法になりました。働く人は商工会議所に個人事業主として登録し、税金を納めます。アムステルダムでは、働ける年齢の下限が21歳に引き上げられているほか、経営者が働く人の身元や意思を確認する義務などが定められています。
ただし、合法化後も人身取引や、恋人を装って女性を支配し働かせる「ラバーボーイ」と呼ばれる手口の被害が問題になり、当局は飾り窓の数を減らす政策を進めてきました。
変わりつつある赤線地区
アムステルダム市は近年、観光客の増加による騒音や迷惑行為を問題視し、次々と規制を打ち出しています。
- ガイドツアーの禁止:2020年から、飾り窓の前を案内するガイドツアーが禁止されました。働く人を「見世物」にしないためです
- 営業時間の短縮:2023年から、飾り窓の閉店時間が早められました
- 路上での大麻の禁止:同じく2023年から、この地区の路上での大麻の使用が禁止されました
- 「エロティック・センター」構想:飾り窓の一部を旧市街から郊外の新しい施設に移す計画が議論されていますが、移転先の住民の反対もあり、先行きは不透明です
働く人たちの中には、「街の象徴を守りたい」「移転すれば安全が損なわれる」として、規制に反対する声もあります。
訪れるときのルールとマナー
- 働く人の撮影は厳禁:窓の女性を撮影することは強く禁じられており、トラブルの原因になります。風景写真のつもりでも窓にカメラを向けないでください
- からかい・冷やかしをしない:働く人は見世物ではありません
- 路上での飲酒、騒音、立ち小便は罰金の対象です
- 路上で声をかけてくる人から薬物を買わない:偽物や危険な混ぜ物の被害が報告されています
働く人の健康を守る仕組み
アムステルダムには、セックスワーカーが匿名で無料の性感染症検査を受けられる公的な窓口や、働く人の相談に乗る支援団体があります。合法化の大きな利点の一つは、こうした保健サービスにつながりやすいことです。性感染症内科医の立場から見ても、働く人が罰せられることを恐れずに検査や治療を受けられる環境は、客を含めた社会全体の感染予防につながります。
なぜアムステルダムに飾り窓があるのか
アムステルダムは17世紀に世界貿易の中心として栄えた港町で、長い航海から戻った船乗りたちが集まる港の近くに、売春の場が形成されていきました。オランダには、宗教や価値観の違う人々が共存するために、禁止するよりも現実を認めて管理するという「寛容政策」の伝統があり、大麻の扱いと同様に、売春に対しても実際的な姿勢がとられてきました。飾り窓は、この寛容の文化を象徴する存在として、世界に知られるようになったのです。
こんな症状があれば受診を
コンドームを使っていても、梅毒やヘルペス、尖圭コンジローマなど、皮膚の接触でうつる性感染症のリスクは残ります。帰国後に排尿時の痛み、性器や口のできもの、発疹などが出たら、泌尿器科や性感染症内科を受診し、渡航先を伝えてください。症状がなくても、適切なタイミングでの検査をおすすめします。