CULTURE

アムステルダムの飾り窓とは?仕組み、ルール、変わりつつある「赤線地区」

執筆・監修:Dr.Taro(性感染症内科医)|2026年10月5日

オランダの首都アムステルダムの旧市街には、赤い照明に照らされたガラス窓の向こうに下着姿の女性が立ち、通りを行く客と交渉する「飾り窓」と呼ばれる一角があります。世界で最も有名な赤線地区のひとつで、観光名所としても知られてきました。しかし近年、この地区は大きな転換期を迎えています。この記事では、飾り窓の仕組みとルール、オランダの法制度、そして変わりつつある街の現状を解説します。

どこにあり、どう成り立っているのか

飾り窓が最も集まっているのは、アムステルダム中央駅の南に広がる旧市街の一角で、地元では「デ・ワレン」と呼ばれます。運河沿いに古い建物が並び、教会や住宅、カフェのすぐ隣に飾り窓がある、独特の風景です。港町として船乗りが集まった中世の時代から、この一帯には売春が存在していたといわれます。

アムステルダム旧市街の運河沿いの小道。れんが造りの建物と並木が続く昼間の風景
飾り窓地区を流れる運河の一つ、アウデザイツ・アフテルブルフワル沿いの昼間の様子。写真:Txllxt TxllxT/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

飾り窓の仕組み

オランダの法律

オランダでは、売春そのものは以前から処罰の対象ではありませんでしたが、2000年に売春宿の禁止が撤廃され、自治体の許可を得た施設での営業が合法になりました。働く人は商工会議所に個人事業主として登録し、税金を納めます。アムステルダムでは、働ける年齢の下限が21歳に引き上げられているほか、経営者が働く人の身元や意思を確認する義務などが定められています。

ただし、合法化後も人身取引や、恋人を装って女性を支配し働かせる「ラバーボーイ」と呼ばれる手口の被害が問題になり、当局は飾り窓の数を減らす政策を進めてきました。

変わりつつある赤線地区

アムステルダム市は近年、観光客の増加による騒音や迷惑行為を問題視し、次々と規制を打ち出しています。

働く人たちの中には、「街の象徴を守りたい」「移転すれば安全が損なわれる」として、規制に反対する声もあります。

訪れるときのルールとマナー

働く人の健康を守る仕組み

アムステルダムには、セックスワーカーが匿名で無料の性感染症検査を受けられる公的な窓口や、働く人の相談に乗る支援団体があります。合法化の大きな利点の一つは、こうした保健サービスにつながりやすいことです。性感染症内科医の立場から見ても、働く人が罰せられることを恐れずに検査や治療を受けられる環境は、客を含めた社会全体の感染予防につながります。

なぜアムステルダムに飾り窓があるのか

アムステルダムは17世紀に世界貿易の中心として栄えた港町で、長い航海から戻った船乗りたちが集まる港の近くに、売春の場が形成されていきました。オランダには、宗教や価値観の違う人々が共存するために、禁止するよりも現実を認めて管理するという「寛容政策」の伝統があり、大麻の扱いと同様に、売春に対しても実際的な姿勢がとられてきました。飾り窓は、この寛容の文化を象徴する存在として、世界に知られるようになったのです。

こんな症状があれば受診を

コンドームを使っていても、梅毒やヘルペス、尖圭コンジローマなど、皮膚の接触でうつる性感染症のリスクは残ります。帰国後に排尿時の痛み、性器や口のできもの、発疹などが出たら、泌尿器科や性感染症内科を受診し、渡航先を伝えてください。症状がなくても、適切なタイミングでの検査をおすすめします。

参考資料

T
Dr.Taro

性感染症内科医。YouTube「性病医 Dr. Taro」で性の健康について発信中。