バングラデシュの性風俗事情:イスラム教国の「認可された売春宿」と、少女たちが働かされる現実
人口の大多数がイスラム教徒であるバングラデシュには、世界最大級ともいわれる売春宿の村があります。首都ダッカから西へ、ガンジス川とジャムナ川が合流する近くのダウラトディアです。バングラデシュでは、一定の手続きを経た売春宿での売春が認められているとされ、イスラム教徒が多数を占める国としては珍しい存在です。しかしその一方で、18歳未満の少女が年齢を偽らされて働かされているという深刻な問題も報告されています。この記事では、バングラデシュの制度と実態を、研究機関の記事や報道などをもとに解説します。
法律と制度の基本
- 憲法:バングラデシュの憲法は、国が売春と賭博を防ぐための効果的な措置をとると定めています。売春を望ましくないものとしつつ、売春そのものを直接禁止する規定にはなっていません
- 売春宿での売春:一定の手続きを経た売春宿での売春は認められているとされています。働く女性は、手数料を払い、18歳以上であること、自分の意思で働くことを宣誓する書類を作って登録する仕組みです
- 未成年:18歳未満の人の売春は違法で、未成年を売春させることは重く処罰されます
- 人身取引:人身取引を防止する法律は、売春を目的とした人の売買や移送を処罰しています
ダウラトディア:売春宿の村
ダウラトディアは、フェリーの発着場がある交通の要所に広がる、売春宿が集まった村です。アメリカの研究機関ウィルソン・センターの記事によれば、ここではおよそ2000人の女性や少女が働き、1日に3000人を超える男性が訪れるとされています。フェリーの待ち時間が長くなると、客が増えるともいわれます。この場所は、国が認める売春宿の一つとして1988年ごろから公式に営業してきたとされますが、それ以前から長く存在していました。
年齢を偽らされる少女たち
制度の上では18歳以上であることが条件ですが、実際には、この仕組みが守られていないことが繰り返し報告されています。ウィルソン・センターの記事は、ダウラトディアで新たに働き始める人の平均年齢が14歳だという報告を紹介しています。売春宿の経営者が警察に賄賂を渡し、未成年の少女を18歳以上として登録させているという指摘もあります。年齢を証明する書類が十分に整っていない地域では、宣誓書だけで年齢を確認する仕組みは簡単に悪用されてしまうのです。
貧困や家族の事情、洪水などの災害による家族の離散が、少女たちが売られたり、だまされたりする原因になっていると考えられています。気候変動による洪水の増加が、人身取引の危険を高めているという指摘もあります。
健康の問題
売春宿で働く女性たちは、性感染症だけでなく、妊娠や中絶に関わる深刻な健康の問題を抱えています。ウィルソン・センターの記事は、中絶に関わる合併症が、セックスワーカーの妊産婦死亡の主な原因になっていることを紹介しています。また、客に好まれるようにと、体重を増やすための薬を使わされている女性がいることも、国際的な報道で取り上げられてきました。
新型コロナウイルスの流行時には、ダウラトディアの女性たちへのワクチン接種が行われたことも報じられ、売春宿が公衆衛生の取り組みの対象となっていることがうかがえます。
制度が「守る」はずのもの
売春宿を認め、登録制にする制度は、本来、働く人を把握し、健康や安全を守り、未成年が働かされることを防ぐためのものです。しかし、登録の手続きが宣誓書だけで済み、警察の監督が賄賂で骨抜きにされれば、制度はかえって搾取を「合法」に見せかける道具になってしまいます。バングラデシュの例は、合法化や登録制が、それだけで働く人を守るわけではないことを示しています。制度を運用する側の公正さと、年齢を確実に確かめる仕組みが欠かせないのです。
日本との比較
日本では、1956年の売春防止法の制定によって、特定の地域で事実上売春が認められていた「赤線」は廃止されました。バングラデシュは、売春宿という形で、売春を特定の場所に集めて認める仕組みを今も持っている点で、かつての日本の赤線に近い面があります。ただし、未成年が働かされているという問題の深刻さは、制度があっても運用が伴わなければ、弱い立場の人を守れないことを示しています。
旅行者が知っておきたいこと
- バングラデシュの売春宿には、18歳未満の少女が働かされている可能性があります
- 18歳未満の人との性的な行為は、国外で行った場合でも日本の法律で処罰されます
- 子どもの性的搾取が疑われる場面に出会ったら、現地の警察や大使館に連絡してください
医師からひとこと
どの国でも、性的な接触ではコンドームの使用が予防の基本です。海外での性的な接触のあとに、排尿時の痛み、性器や口のできもの、発疹などが出たら、帰国後に泌尿器科や性感染症内科を受診し、渡航先を伝えてください。症状がなくても、梅毒やHIVの検査を受けることをおすすめします。