チェコの性風俗事情:合法だが「規制なし」、法律の空白に広がる売春施設
チェコでは、1990年以降、売春は禁止されていません。社会主義体制の時代には売春は犯罪とされていましたが、体制転換後に処罰の規定がなくなりました。ところが、その後も売春を管理する法律は作られず、チェコの売春は「合法だが規制されていない」状態が30年以上続いています。この記事では、法律の空白の中で営まれるチェコの性風俗の実態を、欧州議会の調査などをもとに解説します。
法律の基本:禁止も、管理もされていない
- 売ること、買うこと:成人どうしの売買そのものは犯罪ではありません
- あっせん・搾取:刑法189条は、人を売春に誘い込む、勧誘する、雇い入れること、そして他人の売春から利益を得ることを処罰しています
- 特定の場所での売春:刑法には、学校など特定の施設の近くで売春をすることを処罰する規定もあります
- 自治体の条例:市町村は、公共の秩序を守るために、売春を禁止する区域を設けたり、路上での売春を全面的に禁止したりする条例を作ることができ、違反すると罰金の対象になります
「職業」として認められない
チェコの商業に関する法律は、売春を「不道徳」なものとして、正式な職業の中に含めていません。そのため、セックスワーカーが合法的に働いて税金や社会保険料を払おうとすると、ウェイトレスなど別の職業として届け出るしかない、という状況が続いてきました。働く人は、労働者として守られる仕組みの外に置かれています。
法律の空白に広がる売春施設
刑法は売春のあっせんを禁じていますが、その運用は緩く、組織的な売春施設も珍しくないとされます。欧州議会の調査が引用した報道によれば、内務省は2012年当時、国内に860を超える売春施設があり、そのうち200はプラハにあると推計していました。表向きはナイトクラブやバー、マッサージ店などの形で営業している施設が多いといわれます。
また、チェコはドイツやオーストリアと国境を接しており、体制転換後は、国境近くの道路沿いで外国から来る客を相手にした売春が問題になったこともあります。
規制をめぐる議論
チェコでは、売春を登録制などで管理する法律を作るべきだという議論が、これまで何度も行われてきました。働く人の健康や安全を守り、税金を適正に集めるためには、合法化と規制が必要だという意見がある一方で、売春を国が認めることへの反対もあり、法律の制定には至っていません。その結果、売春は「禁止されていないが、守られてもいない」中途半端な状態に置かれ続けています。
人身取引の問題
欧州議会の調査は、ヨーロッパで性的搾取を目的とした人身取引に関わる犯罪組織の中に、チェコを含む中東欧の国々の組織があることを指摘しています。規制のない市場は、搾取する側にとっても入り込みやすい場所になりうるのです。
「規制なし」は自由なのか
売春が禁止されていないと聞くと、働く人にとって自由な国のように思えるかもしれません。しかし、チェコの実態は、その逆の面も持っています。正式な職業として認められていないため、契約や労働条件をめぐるトラブルがあっても、法律で守られる手段がありません。店や仲介者に頼らざるをえない人は、立場の弱さにつけ込まれやすくなります。また、健康診断や検査を受ける仕組みもないため、性感染症の予防は本人の努力に任されています。禁止もしない、管理もしない、という「放置」は、結果として、もっとも弱い立場の人に負担を押しつけることになりやすいのです。
制度を作らないこともまた、ひとつの選択であり、その結果を引き受けるのは働く人自身だということを、チェコの例は教えています。
規制の議論は、今もチェコの社会の中で続いています。
日本との比較
日本とチェコは、売る人も買う人も直接は処罰しない点では似ていますが、日本は売春防止法で売春を「してはならない」と明記し、性交を伴わない性的サービスについては風営法の届出制という管理の枠組みを持っています。チェコには、売春を禁止する規定も、管理する枠組みもありません。「法律で決めないこと」が、かえって働く人を守れない状況を生んでいる例といえます。
旅行者が知っておきたいこと
- チェコでは成人どうしの売買そのものは犯罪ではありませんが、自治体によっては路上での売買が条例で禁止され、罰金の対象になります
- 売春施設の中には、人身取引の被害者が働かされている場合があります
- 料金や飲食代をめぐるトラブル、盗難にも注意が必要です
医師からひとこと
売春が規制されていない国では、働く人の健康診断や性感染症の検査の仕組みもありません。どの国でも、性的な接触ではコンドームの使用が予防の基本です。海外での性的な接触のあとに、排尿時の痛み、性器や口のできもの、発疹などが出たら、帰国後に泌尿器科や性感染症内科を受診し、渡航先を伝えてください。