CULTURE

サウジアラビアの性風俗事情:売春は厳禁、2020年にむち打ち刑を廃止した国の変化と変わらないもの

執筆・監修:Dr.Taro(性感染症内科医)|2026年10月9日

イスラム教の二大聖地メッカとメディナを抱えるサウジアラビアは、イスラム法(シャリア)を国の法の基本とする国です。売春は厳しく禁止され、関わった人は拘禁刑や罰金の対象となり、外国人は刑の執行後に国外退去となります。かつては、むち打ち刑も科されていましたが、2020年に廃止されました。近年は観光ビザの発給を始めるなど社会の開放が進む一方で、性に関するルールは今も厳格です。この記事では、サウジアラビアの制度と変化を、米国務省の報告書や報道をもとに解説します。

法律の基本

成文の刑法がない国

サウジアラビアの刑事司法の特徴は、多くの犯罪について、日本のような体系的な刑法典がないことです。イスラム法の解釈にもとづいて、裁判官が刑罰を決める範囲が広く、同じような行為でも、事件によって刑の重さが異なることがあります。近年は、法律の成文化を進める改革が行われていますが、性に関する犯罪については、今も宗教的な価値観が強く反映されています。

変わる社会、変わらないルール

サウジアラビアは2017年以降、「ビジョン2030」と呼ばれる改革の中で、女性の自動車の運転の解禁、映画館やコンサートの解禁、観光ビザの発給の開始など、社会の開放を急速に進めてきました。かつて街で人々の服装や行動を取り締まっていた宗教警察も、逮捕の権限を失いました。

2019年に観光ビザの発給が始まった際には、外国人の男女がホテルで同室に泊まる際に結婚証明書を求めないことも認められました。しかし、こうした変化は、売春を認めるものではありません。売春は今も厳しく禁止され、警察は売春の組織を摘発したことをたびたび公表しています。2024年以降も、売春や物乞いの取り締まりを強化する動きが報じられています。

外国人労働者の置かれた立場

サウジアラビアには、南アジアや東南アジア、アフリカなどから、家事労働者や建設労働者として多くの外国人が働きに来ています。米国務省の人身取引報告書は、こうした外国人労働者の中に、強制労働や性的搾取の被害を受ける人がいると指摘してきました。特に家事労働者として働く女性は、雇用主の家に住み込みで働くため、外から状況が見えにくく、虐待や性的な被害を受けても助けを求めることが難しいとされています。

雇用主が労働者の在留資格を管理する「カファラ」と呼ばれる仕組みは、労働者が雇用主のもとを離れることを難しくし、搾取を生みやすいと批判されてきました。サウジアラビアは近年、この仕組みの一部を改める改革を行っています。

むち打ち刑廃止の意味

むち打ち刑の廃止は、国際的な人権の基準に近づけるための改革として報じられました。それ以前は、婚姻外の性的な関係や、売春に関わったとされた人に対して、裁判官の判断でむち打ち刑が科されることがありました。廃止によって刑罰の形は変わりましたが、売春や婚姻外の関係が処罰の対象であることに変わりはありません。改革は、刑罰の残酷さを和らげるものであって、性に関するルールそのものを変えるものではないのです。

サウジアラビアの変化は、急速な社会の開放と、宗教にもとづく厳格なルールの維持という、二つの方向が同時に進んでいることを示しています。

日本との比較

日本の刑法は、成人どうしの合意による婚姻外の性的な関係を処罰していませんし、売春防止法も売る人や買う人を直接は処罰していません。サウジアラビアでは、婚姻外の性的な関係そのものが処罰の対象となり、売春は拘禁刑や国外退去につながる重大な違反です。社会の開放が進んでいるとはいえ、性に関するルールは日本とはまったく異なることを理解しておく必要があります。

旅行者が知っておきたいこと

医師からひとこと

どの国でも、性的な接触ではコンドームの使用が予防の基本です。海外での性的な接触のあとに、排尿時の痛み、性器や口のできもの、発疹などが出たら、帰国後に泌尿器科や性感染症内科を受診し、渡航先を伝えてください。

参考資料

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Dr.Taro

性感染症内科医。YouTube「性病医 Dr. Taro」で性の健康について発信中。