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アメリカの性風俗事情:50州ほぼすべてで違法、例外のネバダと、北欧モデルを選んだメイン州

執筆・監修:Dr.Taro(性感染症内科医)|2026年10月9日

アメリカでは、売春に関する法律は主に州が定めています。そして、ネバダ州の一部の郡で許可を受けた売春宿を除けば、ほぼすべての州で、性を売ることも買うことも犯罪です。一方で、ロードアイランド州では法律の「抜け穴」によって、2009年まで屋内での売春が事実上合法だった時期があり、2023年にはメイン州が、売る人を処罰せず買う人だけを処罰する北欧モデルを、アメリカで初めて取り入れました。この記事では、州ごとに大きく異なるアメリカの制度を、州議会の資料や研究、報道をもとに解説します。

連邦と州の役割分担

ロードアイランド州の「抜け穴」

ロードアイランド州では、1980年の法改正の際に、路上での売春を処罰する規定だけが残り、屋内での売春を処罰する規定が意図せずになくなっていました。2003年、地方裁判所の裁判官がこのことを指摘したことで、マッサージ店やエスコートなどの屋内での売春が、事実上合法の状態になりました。この状態は、2009年11月に州知事が新しい法律に署名して屋内での売春を再び違法にするまで続きました。

この「偶然の非犯罪化」は、研究者にとって貴重な観察の機会になりました。経済学者らの研究は、屋内の売春が非犯罪化されていた期間に、州内で報告された強姦の件数や、女性の淋菌感染症の件数が減少したと報告しています。非犯罪化と公衆衛生の関係を示す研究として、世界的に注目されました。

メイン州:アメリカ初の北欧モデル

2023年、メイン州の州知事は、成人が性を売ることを処罰の対象から外し、性を買うことは引き続き犯罪とする法律に署名しました。アメリカで初めて、北欧モデルを州の法律として取り入れたものです。法律を支持した人々は、人身取引の被害者が前科をおそれずに警察や検察に協力できるようになると評価しました。一方で、セックスワーカーの権利を訴える団体からは、客が処罰される以上、働く人の安全は守られないという批判も出ています。

インターネット広告の規制

2018年、連邦議会は、ネット上での性の売買の広告を助長したウェブサイトの運営者の責任を問いやすくする法律を成立させました。同じ時期に、性的サービスの広告が多く掲載されていた大手の広告サイトが、連邦当局によって閉鎖されました。人身取引の対策として支持される一方で、セックスワーカーが客を事前に確認する手段を失い、路上での仕事や危険な状況に追いやられたという批判も出ています。

性感染症の状況

アメリカでは近年、梅毒の報告数が大きく増え、生まれてくる赤ちゃんに感染する先天梅毒も急増していることが、疾病対策センター(CDC)から報告されています。性の売買が違法とされ、働く人が医療から遠ざけられやすい状況は、性感染症の対策にとっても課題です。HIVの予防のための薬(PrEP)の普及など、予防の手段は広がっていますが、それを必要な人に届けることが求められています。

実験場としての州

アメリカでは、ネバダ州の合法の売春宿、ロードアイランド州の偶然の非犯罪化、メイン州の北欧モデルと、同じ国の中でさまざまな制度が試されてきました。こうした違いは、どの制度が働く人の安全や公衆衛生、人身取引の防止にとって望ましいのかを考えるうえで、貴重な比較の材料になっています。

日本との比較

日本の売春防止法は、売る人や買う人を直接は処罰していませんが、アメリカのほとんどの州では、売る人も買う人も逮捕・起訴されうる犯罪です。一方、アメリカでは州によって制度が大きく異なり、ネバダ州の合法の売春宿から、メイン州の北欧モデルまで、さまざまな制度が同じ国の中に存在します。州が「実験の場」となっている点は、日本にはない特徴です。

旅行者が知っておきたいこと

医師からひとこと

アメリカでは梅毒などの性感染症が増えています。どの国でも、性的な接触ではコンドームの使用が予防の基本です。海外での性的な接触のあとに、排尿時の痛み、性器や口のできもの、発疹などが出たら、帰国後に泌尿器科や性感染症内科を受診し、渡航先を伝えてください。

参考資料

T
Dr.Taro

性感染症内科医。YouTube「性病医 Dr. Taro」で性の健康について発信中。