CULTURE

ウズベキスタンの性風俗事情:売春は行政罰、売春宿は刑法、HIV検査をめぐる議論

執筆・監修:Dr.Taro(性感染症内科医)|2026年10月9日

シルクロードの古都サマルカンドやブハラで知られる中央アジアのウズベキスタンでは、売春は行政上の違反として罰金などの対象とされ、売春宿の経営やポン引き、未成年を売春に引き込むことは刑法で処罰されます。近年は、売春宿を訪れた客にも罰金を科し、性感染症の検査を受けさせる案が報じられたり、セックスワーカーなどにHIVの検査を義務づける法案が議論されたりして、国内外で注目を集めました。この記事では、ウズベキスタンの制度と議論を、報道や国際機関、人権団体の資料をもとに解説します。

法律の基本

客への罰金と強制検査の案

中央アジアの通信社は、ウズベキスタン政府が、売春宿を訪れた客に最低賃金相当の罰金を科し、性感染症の検査を受けさせ、感染がわかれば専門の医療機関で入院治療を受けさせるという改正案を検討していると報じました。客にも責任を負わせるという点では北欧モデルに近い面もありますが、検査や治療を強制するという点で、人権の観点から議論を呼ぶ内容です。

HIVの検査をめぐる議論

HIVの問題に取り組む国際的な団体は、ウズベキスタンで、セックスワーカーや男性どうしで性行為をする人、薬物を使う人などに、HIVの検査を義務づける法案が議論されていることを伝えました。法案は、こうした人々を「危険な集団」と位置づけるものだとして、差別を助長し、かえって検査や治療から人々を遠ざけるおそれがあると批判されています。国際的な保健機関は、HIVの検査は強制ではなく、本人の同意にもとづいて、秘密を守って行うべきだとしています。

ウズベキスタンでは、HIVを他人に感染させたとして、セックスワーカーの女性が拘禁刑の判決を受けた事例も報告されています。

セックスワーカーとHIV

報道によれば、ウズベキスタンのセックスワーカーの間のHIVの感染率は約3.2%とされています。中央アジアでは、注射による薬物使用とセックスワークが重なり合うことで、HIVの感染が広がってきたことが研究で示されています。首都タシケントやサマルカンドのセックスワーカーを対象にした研究も行われ、感染に関わる要因が調べられてきました。

国外への出稼ぎと人身取引

ウズベキスタンからは、ロシアやカザフスタン、トルコ、中東などへ、多くの人が出稼ぎに出ています。その中には、仕事を約束されてだまされ、性的搾取の被害を受ける女性もいるとされます。米国務省の人身取引報告書は、ウズベキスタンの人身取引の状況と、政府の取り組みについて評価を続けています。

強制より支援を

HIVなどの性感染症の対策では、特定の人々に検査を強制するよりも、本人が安心して自分から検査を受けられる環境を整えるほうが効果的だと、国際的な保健機関は考えています。検査を強制され、陽性とわかれば処罰や差別を受けるおそれがあると感じれば、人々は検査そのものを避けるようになります。ウズベキスタンの議論は、感染症の対策と人権の尊重をどう両立させるかという、多くの国に共通する問いを投げかけています。

差別をなくし、誰もが安心して検査や治療を受けられる環境を整えることが、感染症の対策の土台になります。法案の行方が注目されます。

当事者の声を聞きながら、制度を考えることが大切です。中央アジアの国々に共通する課題でもあります。

今後の動きに注目です。

日本との比較

日本の売春防止法は、売る人を直接は処罰しませんが、ウズベキスタンは、売る人に行政上の罰を科しています。また、日本では、HIVの検査は本人の同意にもとづいて、匿名で受けられる仕組みが整えられています。特定の人々に検査を義務づけるという考え方は、日本の感染症対策の考え方とは大きく異なります。

旅行者が知っておきたいこと

医師からひとこと

HIVの検査は、強制されるものではなく、自分の健康のために自分から受けるものです。日本では、保健所などで無料・匿名で検査を受けられるところも多くあります。海外での性的な接触のあとに不安があれば、症状がなくても検査を受けてください。コンドームの使用が予防の基本です。

参考資料

T
Dr.Taro

性感染症内科医。YouTube「性病医 Dr. Taro」で性の健康について発信中。