CULTURE

海外の風俗へ「出稼ぎ」に行く人たち:日本、東南アジア、中国から、どこへ、なぜ

執筆・監修:Dr.Taro(性感染症内科医)|2026年10月5日

近年、日本の若い女性が海外の性風俗店に「出稼ぎ」に行き、現地で摘発されたり、入国を拒否されたりするニュースが相次いでいます。しかし、性産業をめぐる国境を越えた人の移動は、日本だけの話ではありません。東南アジアや中国からも、多くの人がよりよい収入を求めて他の国の性産業で働いています。この記事では、誰が、どこへ、なぜ移動するのか、そしてその裏にあるリスクと搾取の実態を解説します。

歴史:「からゆきさん」と「ジャパゆきさん」

日本から海外への性産業の出稼ぎは、新しい現象ではありません。明治から大正にかけて、九州の天草や島原などの貧しい農村から、多くの女性が東南アジアや中国、シベリアなどに渡り、娼婦として働きました。彼女たちは「からゆきさん(唐行きさん)」と呼ばれ、その多くは人買いにだまされたり、家族の借金のために売られたりした人たちでした。

その後、日本が経済的に豊かになると、流れは逆転します。1980年代以降、フィリピンやタイなどから多くの女性が日本に来て、飲食店や性風俗店で働くようになりました。彼女たちは「からゆきさん」をもじって「ジャパゆきさん」と呼ばれました。「興行」の在留資格で来日したエンターテイナーが、実際には接客や性的サービスを強いられる例も多く、2004年にはアメリカ国務省の人身取引報告書で「監視対象」とされ、日本は2005年に「興行」の在留資格の基準を厳しくしました。その結果、フィリピンからの「興行」での入国者は、2004年の約8万3千人から2006年には約8千6百人に激減しました。

現在の日本からの出稼ぎ

2010年代後半から、日本人女性が海外の性風俗店で働くケースが増えているといわれています。主な行き先として報じられてきたのは、オーストラリア、アメリカ、カナダ、香港、マカオ、シンガポールなどです。

しかし、その実態はうたい文句ほど甘くありません。

東南アジアと中国からの流れ

アジア全体を見ると、性産業をめぐる人の移動は、おおむね「経済的に貧しい国・地域から、豊かな国・地域へ」という方向で起きています。

また、ヨーロッパでは、ルーマニアやブルガリアなど東欧の国から、ドイツやオランダなど西欧の国のセックスワークに移動する流れが大きくなっています(ドイツのFKK)。

「自分の意思」と「人身取引」の境目

国境を越えて性産業で働く人の中には、自分の意思で、条件を理解したうえで働く人もいます。一方で、だまされて連れてこられ、借金や暴力、パスポートの取り上げによって逃げられない状態に置かれる人もいます。後者は人身取引という重大な犯罪です。そして実際には、最初は自分の意思で渡航したのに、現地で条件が変わって搾取される、というように、その境目はあいまいなことが少なくありません。

困ったときの相談先

医師からひとこと

海外で働くと、言葉の壁や医療費の高さ、違法に働いていることへの不安から、性感染症の検査や治療が後回しになりがちです。帰国したら、症状がなくても一度、性感染症の検査を受けてください。排尿時の痛み、おりものの変化、性器や口のできもの、発疹などがあれば、婦人科や性感染症内科を受診し、海外で働いていたことも伝えてください。責めることはありません。必要な検査を選ぶための大切な情報です。

参考資料

T
Dr.Taro

性感染症内科医。YouTube「性病医 Dr. Taro」で性の健康について発信中。