CULTURE

SMとは?BDSMの基本、同意のルール、医師が教える体のリスク

執筆・監修:Dr.Taro(性感染症内科医)|2026年10月5日

縛る、叩く、命令する、支配される。SMは「変わった趣味」と思われがちですが、海外の調査では、SMに関連する空想を抱いたことがある人は決して少数派ではないことが分かっています。一方で、体を拘束したり痛みを与えたりする行為には、医学的なリスクも伴います。この記事では、SM(BDSM)の基本、プレイを成り立たせる「同意」のルール、そして医師の視点から知っておいてほしい体のリスクを解説します。

「サディズム」と「マゾヒズム」の由来

サディズムとマゾヒズムという言葉は、19世紀末のオーストリアの精神医学者クラフト=エビングが、性の「異常」を分類した著書の中で広めたものです。サディズムは、苦痛を与える場面を描いたフランスの作家サド侯爵に、マゾヒズムは、女性に支配される男性を描いたオーストリアの作家ザッハー=マゾッホに由来します。当時は病気として扱われていましたが、現在の精神医学では、本人や他人に苦痛や害がなく、同意のうえで楽しんでいる限り、病気とはみなされません。

BDSMの6つの要素

現在では、SMを含む幅広い実践を、BDSMという言葉でまとめて呼ぶことが一般的です。

多くの人は、これらのすべてではなく、一部だけを好みます。痛みはまったく好まないが、支配と服従の関係性を楽しむ、という人もいます。主導する側を「ドム」「S」、従う側を「サブ」「M」、両方を楽しむ人を「スイッチ」と呼びます。

SMを成り立たせる「同意」のルール

SMと暴力を分けるのは、事前の十分な話し合いと、いつでも撤回できる同意です。SMのコミュニティでは、次のような原則が共有されています。

主導権を握っているように見えるS側には、相手の安全に責任を負うという、重い役割があります。

医師が教える体のリスク

拘束による神経の麻痺

腕を縛ったり、長時間同じ姿勢で拘束したりすると、腕の神経が圧迫されて、手首が上がらなくなる(橈骨神経麻痺)などの麻痺が起こることがあります。しびれ、冷え、色の変化があればすぐにほどくこと、すぐに切れるように安全はさみを手元に置くことが基本です。

首への圧迫は絶対にしない

首を絞める、首に縄をかける行為は、数秒で意識を失い、死亡や後遺症につながる危険があります。どんなに注意しても安全にはできません(マスターベーション中の死亡事故)。

叩く行為

叩くのは、お尻や太ももの裏など、筋肉や脂肪の多い部分に限ります。腰(腎臓のある部分)、背骨、関節、頭、顔は避けてください。

ろうそく

一般的なろうそくは溶けたろうの温度が高く、やけどの原因になります。プレイ用の低温ろうそくでも、高い位置から垂らす、同じ場所に続けて垂らさないなどの注意が必要です。

性感染症

道具を共有する場合は、体液や血液を介した感染に注意が必要です。皮膚が傷つく可能性のある道具は共有しない、使い終わったら洗浄・消毒することが基本です。

法律の話:同意があれば何をしてもいいわけではない

日本では、相手が同意していても、けがの程度や行為の内容によっては傷害罪に問われる可能性があります。イギリスでも、同意のうえでのSM行為による傷害が有罪とされた有名な判例があります。また、パートナーから「SMだから」と称して、同意のない暴力をふるわれている場合は、SMではなくDVです。

SMクラブという業態

日本には、SMプレイを提供する性風俗店(SMクラブ)があります。風営法上は、他の性風俗店と同じく届出をして営業しています。プロの店では、NGの確認やセーフワードのルールが徹底されていることが多いですが、利用する場合も、事前の確認と体調の申告は欠かせません。

こんなときは受診を

拘束のあとに手足のしびれや力が入らない状態が続く、皮膚の傷が赤く腫れて熱をもつ、頭を打った、首を圧迫されて意識を失った、といった場合は、すぐに医療機関を受診してください。また、自分の性的な衝動が相手の同意を超えてしまいそう、プレイがやめられず生活に支障が出ているといった悩みは、精神科や心療内科で相談できます。

参考資料

T
Dr.Taro

性感染症内科医。YouTube「性病医 Dr. Taro」で性の健康について発信中。