女性のアナルセックス:体のしくみ、痛みを防ぐ準備、感染症のリスク【医師が解説】
アナルセックス(肛門性交)は、男性同士のセックスだけのものではありません。海外の調査では、異性愛の女性の中にも経験がある人が一定の割合でいることが分かっています。一方で、「パートナーに求められて断れなかった」「痛かったのに我慢した」という声も少なくありません。この記事では、女性がアナルセックスをする場合に知っておくべき体のしくみ、痛みや傷を防ぐための準備、性感染症のリスクを解説します。大前提は、本人が望んでいることです。
まず「したくない」は当然の選択
アナルセックスに興味がない、したくない、というのはまったく自然なことです。アダルト動画では当たり前のように描かれますが、現実には経験のない人のほうが多数派です。パートナーから求められても、断ってかまいません。一度同意したあとでも、途中でやめたいと思えばいつでもやめられます。同意のない行為は、相手がパートナーであっても犯罪です。
肛門と直腸のしくみ
- 2つの筋肉:肛門には、自分の意思でゆるめたり締めたりできる外側の筋肉(外肛門括約筋)と、意思では動かせない内側の筋肉(内肛門括約筋)があります。内側の筋肉は、急に何かが入ってくると反射的に締まります。だから「ゆっくり」が何より大切なのです
- 自然には潤わない:腟と違って、肛門や直腸は性的に興奮しても潤いません。潤滑剤が必須です
- 粘膜が薄い:直腸の粘膜は薄く傷つきやすいため、小さな傷から細菌やウイルスが入りやすい構造です
- 神経が多い:肛門の周りには神経が多く集まっています。また、肛門の刺激は腟の奥やクリトリスの根元の構造にも間接的に伝わるため、快感を感じる女性もいます
痛みと傷を防ぐための準備
- 二人で話し合う:何をするか、どこまでするか、痛いときやめたいときの合図を、事前に決めておきます
- 排便をすませ、シャワーで洗う:浣腸を頻繁に使うのは、腸の粘膜を傷めるので勧められません
- パートナーの爪を短く:指で触れる場合、爪の角が傷の原因になります
- 潤滑剤をたっぷり:途中で足しながら使います。コンドームを使う場合は、水溶性かシリコンベースの潤滑剤を選んでください。油性のものはラテックスのコンドームを傷めます
- 段階を踏む:いきなり挿入するのではなく、まずは指1本、または細い肛門用のトイなどから始め、時間をかけて慣らします。1回で挿入まで至らなくても失敗ではありません
体位とペース
- 受け入れる側の女性が上になる体位や、横向きに寝る体位だと、女性自身が深さや速さをコントロールしやすくなります
- 挿入は息を吐きながら、ゆっくり。女性が「入れていい」と言うまで待ちます
- 痛みは「やめて」のサインです。鋭い痛みがあれば、すぐに中止してください
- 麻酔成分の入ったクリームは使わないでください。痛みが分からなくなり、傷に気づかないまま続けてしまう危険があります
- お酒や薬物で感覚を鈍らせた状態で行わないでください
絶対に守ってほしいこと:肛門から腟へは直接移らない
肛門や直腸には大腸菌などの腸内細菌がいます。肛門に入れた陰茎、指、トイを、そのまま腟に入れると、細菌性腟炎や膀胱炎などの尿路感染症の原因になります。肛門から腟へ移る場合は、コンドームを新しいものに付け替える、指やトイはよく洗う、を必ず守ってください。逆に、腟から肛門の順は問題ありません。
性感染症のリスク
アナルセックスは、性行為の中でも性感染症のリスクが高い行為です。
- HIV:受け入れる側の肛門性交は、1回あたりの感染リスクが最も高い性行為とされています
- 淋菌・クラミジア:直腸に感染しても症状がほとんど出ないことが多く、気づかないまま広がります。性器の検査だけでは見つからないので、心当たりがあれば直腸の検査も必要です
- 梅毒・ヘルペス・尖圭コンジローマ:肛門の周りにもうつります
- HPV:肛門がんの原因になるウイルスです。HPVワクチンで予防できる型があります
- A型肝炎・腸の感染症:便を介して感染することがあります
決まったパートナーとの間でも、コンドームを使うことが基本です。
あとで起こりうるトラブル
- 少量の出血:紙につく程度の出血はよくありますが、続く場合は切れ痔などの可能性があります
- 痔の悪化:もともと痔がある人は、悪化することがあります
- 便意やおなかの張り:一時的なものなら心配いりません
アダルト動画との違い
アダルト動画では、準備もなくすぐに挿入し、受け入れる側が痛がる様子もなく快感を得ているように描かれることがあります。しかし、これは編集された演出であり、撮影の前には時間をかけた準備が行われているといわれます。現実のアナルセックスでは、十分な準備と時間をかけても、痛みがあって続けられないことは珍しくありません。動画を基準にパートナーに求めたり、うまくいかない自分を責めたりする必要はまったくありません。
こんな症状があれば受診を
出血が止まらない、強い痛みが続く、発熱がある、肛門から膿のようなものが出る、肛門の周りにできものができた、といった場合は、肛門科、婦人科、性感染症内科を受診してください。医師には、肛門での性行為があったことを伝えてください。直腸の検査が必要かどうかの判断に欠かせない情報です。医療者にとっては日常的な相談なので、恥ずかしがる必要はありません。