セックスの体位、医師が考える選び方:基本の5つと、腰痛・妊娠中・ケガ予防のポイント
セックスの体位について、医学的な視点から語られることはあまりありません。けれど、体位の選び方は、気持ちよさだけでなく、痛みやケガの予防、腰痛や妊娠中の体への負担とも深く関わっています。この記事では、基本となる5つの体位の特徴を整理し、体の状態に合わせた選び方を、医師の視点から解説します。
基本の5つの体位
体位の名前はたくさんありますが、ほとんどは次の5つの基本形の組み合わせや応用です。ここでは、腟性交を例に説明します。
| 体位 | 姿勢 | 特徴 |
|---|---|---|
| 正常位 | 受け入れる側があおむけになり、挿入する側が向かい合って上になる | 顔が見え、キスや会話がしやすい。上の人の腕や腰に負担がかかる |
| 騎乗位 | 挿入する側があおむけになり、受け入れる側が上にまたがる | 上の人が深さや角度、速さを調整できる。下の人の負担は少ない |
| 後背位 | 受け入れる側が四つんばいなどになり、挿入する側が後ろから | 挿入が深くなりやすい。顔が見えないぶん、声をかけ合うことが大切 |
| 側位 | 二人とも横向きに寝る(後ろから寄り添う形や、向かい合う形) | 二人とも体への負担が少ない。動きはゆるやか |
| 座位 | 挿入する側が座り、受け入れる側が向かい合ってまたがる | 密着感が強い。大きく動くのは難しい |
「深さ」をコントロールできるかが大事
セックスの痛み(性交痛)で悩む人は少なくありません。とくに、奥まで深く挿入されたときに痛みを感じる場合は、受け入れる側が深さを調整できる体位を選ぶのが基本です。
- 騎乗位:受け入れる側が自分で深さや角度をコントロールできる
- 側位:構造的に深く入りにくい
- 後背位:深くなりやすいので、痛みがある人は注意
性交痛は、潤い不足、腟の炎症、子宮内膜症などの病気が原因のこともあります。体位を変えても痛みが続く場合は、婦人科で相談してください。
腰痛がある人の体位
腰痛がセックスの妨げになっている人は意外に多く、その多くがパートナーに言い出せずにいます。腰痛のタイプによって、楽な姿勢は異なります。
- 前かがみで痛むタイプ:背中を丸める動きがつらいので、背骨をまっすぐ保てる姿勢が向いています。四つんばいで両手をついて背中を支える後背位などが、比較的楽だという研究報告があります
- 反らすと痛むタイプ:腰を反らす動きがつらいので、あおむけで膝を曲げ、腰の下にクッションを入れて反りすぎを防ぐ正常位などが向いています
- 共通のポイント:腰ではなく股関節を使って動く、クッションや枕で体を支える、無理をせず動きを小さくする
カナダの研究では、腰痛のある人によく勧められてきた「側位なら楽」という考え方が、すべての人に当てはまるわけではないことも示されています。自分の痛みのタイプに合わせて、試しながら楽な姿勢を探してみてください。
妊娠中の体位
経過が順調な妊娠であれば、セックスは基本的に禁止されていません。ただし、出血がある、切迫早産と言われている、前置胎盤があるなど、主治医からセックスを控えるよう言われている場合は従ってください。
- お腹が大きくなってきたら、お腹を圧迫しない体位を選ぶ
- 妊娠中期以降は、長時間あおむけになると大きくなった子宮が太い血管を圧迫し、血圧が下がって気分が悪くなることがある(仰臥位低血圧症候群)
- 側位や騎乗位など、妊娠している人の体に負担の少ない体位がおすすめ
- 妊娠中も性感染症はうつり、赤ちゃんに影響することがあるので、コンドームを使う
ケガを防ぐために:陰茎折症
あまり知られていませんが、勃起した陰茎が強く曲げられると、「陰茎折症」というケガが起こることがあります。挿入がはずれた状態で勢いよく体重がかかったときなどに起こりやすく、ブラジルの研究では、陰茎折症の原因になった体位は後背位が約43%、挿入する側が上になる正常位が約40%で、受け入れる側が上になる騎乗位は約12%だったと報告されています。
「ポキッ」という音とともに急に勃起がおさまり、陰茎が腫れて紫色に変色するのが典型的な症状です。陰茎折症は緊急手術が必要になることが多いケガです。恥ずかしがらずに、すぐに泌尿器科のある病院の救急外来を受診してください。激しく動くときほど、角度がずれていないか気をつけることが予防になります。
体位を楽しむための基本
- 声をかけ合う:「痛くない?」「この角度がいい」など、言葉で伝え合うことが何より大切です
- 潤滑剤を使う:体位を変えると摩擦の具合も変わります。乾燥は痛みや傷の原因になります
- クッションを活用する:腰の下や膝の下に置くだけで、体の負担が大きく変わります
- コンドームはどの体位でも:体位を変える途中でずれたり外れたりしていないか確認しましょう。肛門性交と腟性交を続けて行う場合は、必ず新しいものに付け替えてください
- 同意はいつでも撤回できる:途中で「やめたい」と言われたら、すぐにやめるのがルールです
こんな症状があれば受診を
セックスのたびに痛みがある、セックスのあとに出血する、陰茎を曲げたときに音がして腫れた、腰痛がセックスのたびに悪化する、といった場合は、婦人科、泌尿器科、整形外科などで相談してください。性の悩みは、医療者にとって日常的な相談です。