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梅毒が止まらない:日本で増え続ける理由、症状の経過、検査と治療【性病医が解説】

執筆・監修:Dr.Taro(性感染症内科医)|2026年10月6日

梅毒は「昔の病気」ではありません。日本では2010年代から報告数が急増し、2022年に年間1万人を超えました。2023年には15,055人と、現在の方法で統計をとり始めてから最多を記録し、2024年も14,829人、2025年も13,530人(速報値)と、高い水準が続いています。性感染症内科の外来でも、梅毒と診断される人は今や珍しくありません。梅毒は、早く見つけて治療すれば治る病気ですが、症状が出たり消えたりするため、気づかないまま進行したり、人にうつしたりしてしまいます。この記事では、梅毒の症状の経過、なぜ増えているのか、検査と治療のポイントを、性病医の立場から解説します。

梅毒とはどんな病気か

梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌によって起こる性感染症です。性器、肛門、口などの粘膜や皮膚の小さな傷から体内に入り、血液にのって全身に広がります。性交だけでなく、オーラルセックスやアナルセックス、病変のある部分との皮膚の接触でもうつります。

症状の経過

第1期(感染から約3週間後)

細菌が入った場所(性器、肛門、唇、口の中など)に、痛みの少ない硬いしこりや、ただれ(潰瘍)ができます。足の付け根のリンパ節が腫れることもあります。痛みがほとんどないため気づきにくく、数週間で自然に消えてしまいます。しかし、治ったわけではありません。

第2期(感染から約3か月後)

細菌が全身に広がり、体や手のひら、足の裏に、赤い発疹(バラ疹など)が出ます。かゆみが少ないのが特徴です。発熱、だるさ、リンパ節の腫れ、脱毛などが出ることもあります。この発疹も、治療しなくても数週間から数か月で消えてしまいます。

潜伏期と晩期

第2期の症状が消えると、症状のない時期(潜伏梅毒)に入ります。治療しないまま何年もたつと、心臓や血管、神経、骨などに重い障害が起こることがあります(晩期梅毒)。現代の日本で晩期まで進むことはまれですが、目や神経に梅毒が及ぶこと(眼梅毒・神経梅毒)は、比較的早い時期にも起こりえます。視力の低下や見え方の異常、強い頭痛などが出た場合は注意が必要です。

妊娠と梅毒

妊娠中の人が梅毒に感染していると、胎盤を通じて赤ちゃんに感染し、流産や死産、赤ちゃんの重い障害の原因になることがあります(先天梅毒)。日本では妊婦健診で梅毒の検査が行われていますが、近年、先天梅毒の報告も増えています。妊娠中やパートナーが妊娠しているときこそ、性感染症の予防と検査が大切です。

なぜ日本で梅毒が増えているのか

はっきりとした原因は分かっていませんが、次のようなことが指摘されています。

検査

梅毒の検査は、主に血液検査で行います。体が梅毒に反応してつくる抗体を調べるため、感染してから陽性になるまでに約4週間かかります。保健所では、無料・匿名で梅毒の検査を受けられるところも多くあります。また、梅毒にかかった人は、HIVなど他の性感染症にもかかっていることがあるため、あわせて検査を受けることが勧められます。

治療

梅毒は、抗菌薬(ペニシリン系)で治療できます。日本では長く、飲み薬を数週間続ける治療が中心でしたが、2021年に、海外で標準的に使われている筋肉注射の薬(ベンジルペニシリンベンザチン)が承認され、2022年1月から使えるようになりました。早期梅毒であれば、1回の注射で治療できます(神経梅毒には使いません)。

予防

「梅毒は昔の病気」という誤解

梅毒は、ペニシリンの普及で一時は大きく減り、「過去の病気」と思われていました。そのため、医療者の側でも梅毒を疑う経験が少なく、発疹が別の皮膚病と診断されるなど、見逃されることがありました。現在は、医療者の間でも梅毒への注意が高まっています。受診のときは、性的な接触があったことを伝えてください。

こんな症状があれば受診を

性器、肛門、口の中に痛みのないしこりやただれができた、手のひらや足の裏、体に赤い発疹が出た、という場合は、症状が消えたとしても、泌尿器科、婦人科、皮膚科、性感染症内科を受診してください。「消えたから治った」は梅毒では通用しません。早く見つけて治療すれば、きちんと治る病気です。

参考資料

T
Dr.Taro

性感染症内科医。YouTube「性病医 Dr. Taro」で性の健康について発信中。