前立腺の刺激でオーガズムを得るには:場所、準備、安全な進め方【医師が解説】
男性の体には、陰茎とは別に、前立腺という性的な快感を生む器官があります。前立腺を刺激して得られる快感やオーガズムに関心をもつ男性は少なくありませんが、肛門から触れる必要があることもあり、正しい情報が得にくいテーマです。この記事では、前立腺の場所としくみ、安全に試すための準備と進め方、注意すべきトラブルを、医師の立場から解説します。性的指向とは関係のない、男性の体の話です。
前立腺はどこにある?
前立腺は、膀胱のすぐ下にあり、尿道を取り囲むように位置する、クルミほどの大きさの器官です。精液の一部(前立腺液)をつくる働きがあり、射精のときには収縮して精液を送り出します。
前立腺は直腸のすぐ前(お腹側)にあるため、肛門から指を5センチほど入れ、お腹側の壁に触れると、少しふくらんだ、弾力のある部分として感じることができます。泌尿器科の診察で行う「直腸診」も、同じ方法で前立腺の大きさや硬さを調べています。また、陰嚢と肛門の間の「会陰」と呼ばれる部分を外から押すことでも、間接的に刺激することができます。
どんな感覚なのか
前立腺を刺激したときの感覚は人によってさまざまです。最初は「尿意のような感じ」や「何も感じない」という人も多く、すぐに快感やオーガズムに結びつくとは限りません。繰り返すうちに快感として感じられるようになる、という人もいます。
前立腺の刺激によるオーガズムは、陰茎の刺激によるものとは違い、射精を伴わないことがある、快感が体全体に広がるように感じる、などと表現されます。ただし、こうした感覚についての科学的な研究はまだ多くありません。「必ずこうなる」というものではないと考えてください。
始める前の準備
- 排便をすませる:直腸に便がない状態のほうが、衛生的で、本人も安心できます。シャワーで肛門の周りを洗っておきましょう。浣腸を頻繁に使うのは、腸の粘膜に負担がかかるので勧められません
- 爪を短く切り、やすりで整える:直腸の粘膜は薄く傷つきやすいので、爪の角は大敵です。医療用の使い捨て手袋を使うのもよい方法です
- 潤滑剤はたっぷり:肛門や直腸は自然には潤いません。潤滑剤なしで挿入すると、切れ痔などの傷の原因になります
- リラックスできる時間と場所:緊張すると肛門の筋肉が締まって、痛みの原因になります
安全な進め方
- 外側から始める:まずは会陰部を指でゆっくり押してみて、感覚をつかみます
- 肛門の周りをほぐす:潤滑剤をつけた指で、肛門の周りを軽くマッサージします。肛門には自分の意思でゆるめられる外側の筋肉と、意思では動かせない内側の筋肉があり、ゆっくり慣らすことで内側の筋肉もゆるんできます
- ゆっくり挿入する:息を吐きながら、指1本をゆっくり入れます。痛みがあれば無理をせず、その日はそこでやめてください
- お腹側を探る:指の腹をお腹(へそ)の方向に向け、前立腺のふくらみを探します。強くこするのではなく、やさしく押したり、ゆっくり円を描いたりするのが基本です
- 陰茎への刺激と組み合わせる人も:前立腺の刺激だけでなく、陰茎への刺激を同時に行う人もいます
前立腺用のトイを使う場合
前立腺を刺激するために曲がった形をした、専用のトイがあります。使うときは次の点を守ってください。
- 必ず根元にストッパー(つば)がある、肛門用の専用品を選ぶ。ストッパーのないものは直腸の奥に入り込み、取れなくなる危険がある
- シリコン製など、洗いやすい素材を選ぶ(トイの洗い方)
- シリコン製のトイには、水溶性の潤滑剤を使う
- 電動のものは、防水性能や説明書の注意を守る
やってはいけないこと
- 痛みを我慢して続ける。痛みは体からの「やめて」のサインです
- 麻酔成分の入ったクリームを使う。痛みが分からなくなり、傷に気づかなくなります
- お酒や薬物を使った状態で行う
- 日用品など、専用品でないものを入れる
- 肛門に触れた指やトイで、そのまま尿道や、パートナーの腟に触れる(尿路感染症や腟炎の原因になります)
よくある誤解
「前立腺を刺激すると前立腺がんの予防になる」という話を見かけることがありますが、前立腺マッサージにがんを予防する効果があるという科学的な根拠はありません。また、前立腺炎で痛みや発熱があるときに刺激すると、症状を悪化させることがあります。
パートナーに刺激してもらう場合
パートナーに前立腺を刺激してもらう場合も、基本は同じです。爪を短くし、手袋やコンドームを指にかぶせ、潤滑剤をたっぷり使い、受ける側のペースに合わせてゆっくり進めます。痛いときやもうやめたいときの合図を事前に決めておくと安心です。肛門からの刺激に抵抗を感じる人もいるので、どちらの立場であっても、無理強いはしないことが大切です。また、パートナーとの間でも、肛門を介して淋菌、クラミジア、梅毒などの性感染症がうつることがあります。
こんな症状があれば受診を
- 出血が止まらない、肛門の痛みが続く(切れ痔やその他の傷の可能性)
- 発熱、排尿時の痛み、会陰部の痛み(前立腺炎の可能性)
- トイが中に入って取れない(無理に取ろうとせず、すぐに医療機関へ)
パートナーと行う場合は、肛門や直腸にも性感染症がうつります。コンドームを使い、症状がなくても定期的に検査を受けてください。肛門科や泌尿器科、性感染症内科で相談できます。