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ポルトガルの性風俗事情:1982年に売春を非犯罪化、それでも「部屋を貸すだけ」で犯罪になる国

執筆・監修:Dr.Taro(性感染症内科医)|2026年10月9日

ポルトガルでは、1982年に売春が非犯罪化され、現在、成人が性を売ること自体は違法ではありません。ところが、売春をあっせんしたり、手助けしたり、そこから利益を得たりすることは刑法で広く処罰されており、その範囲は、セックスワーカーに部屋を貸すことや、セックスワーカーどうしが一緒に働くことにまで及ぶとされています。この記事では、「合法だが孤立させられる」ポルトガルの制度を、欧州議会の調査などをもとに解説します。

1982年の非犯罪化

ポルトガルでは、1982年の政令第400号によって、売春そのものが処罰の対象から外されました。現在、成人どうしの性の売買そのものは犯罪ではありません。ただし、売春を管理したり登録させたりする法律はなく、「合法だが規制されていない」状態にあります。

広く処罰される「あっせん」

ポルトガルの刑法169条は、営利目的で他人の売春を広めたり、促したり、容易にしたりする行為を「あっせん」として処罰しています。暴力や脅迫、だまし、権力の乱用を伴う場合には、刑がさらに重くなります。

この規定の範囲は非常に広く、欧州議会の調査は、セックスワーカーにアパートを貸すことや、セックスワーカーが室内で共同で働くことも違法になると指摘しています。つまり、売ること自体は合法でも、その周りのほとんどの行為が犯罪とされうるため、働く人は一人で、人目につかない場所で働かざるをえない状況に置かれやすいのです。

「あっせん」処罰をめぐる憲法論争

ポルトガルでは、本人の同意があり、搾取や強制を伴わない場合にまで「あっせん」を処罰するのは、職業選択の自由などとの関係で憲法に反するのではないか、という議論が法律家の間で続いてきました。実際に、2020年には憲法裁判所の判決(第134号)が、この規定を違憲とする判断を示し、注目を集めました。しかし、判断が分かれたことを受けて、2021年に憲法裁判所の大法廷(第72号判決)が、あっせんの処罰は違憲ではないと判断を統一し、その後の判決もこの立場を引き継いでいます。学説の間では、今も批判が根強く残っています。

ほかの国と比べると

「売ることは合法、周りの行為は違法」という構造は、イギリスやアイルランド、シンガポールとも共通しています。これに対して、隣国のスペインは「同意があり搾取とはいえない仲介」を処罰しにくい制度で、同じイベリア半島でも違いがあります。さらに、ベルギーのように周りの行為まで非犯罪化し、労働として認める国もあります。

「売ることは合法」の中身

ポルトガルの制度は、法律の上では「売ることは合法」ですが、その中身をよく見ると、合法に働ける場面はとても限られています。部屋を借りれば家主があっせんに問われるおそれがあり、仲間と一緒に働けば互いにあっせんとみなされるおそれがある。結局、合法に働けるのは、自分の持ち家などで一人で働く場合に近い、ということになりかねません。こうした制度は、働く人を危険から遠ざけるどころか、かえって孤立させ、暴力や搾取の被害を受けやすくするのではないかという批判があります。2020年の憲法裁判所の判決が一度違憲の判断を示したのも、こうした問題意識が背景にありました。

売ることを合法にするだけでは、働く人の安全は守れない。ポルトガルの制度は、そのことを示す一つの例だといえます。

合法と違法の境目がどこにあるのかは、働く人の生活を大きく左右するのです。

制度の細部にこそ、その国の考え方が表れます。

日本との比較

日本の売春防止法も、売る人や買う人を直接は処罰せず、売春をさせる目的での場所の提供や、売春の管理・あっせんを処罰しています。その点でポルトガルと日本の構造は似ていますが、日本には、性交を伴わない性的サービスを風営法の届出制で認める仕組みがあり、店舗や派遣型の性風俗が合法的に営業できます。ポルトガルにはそのような枠組みがなく、性の売買はほぼ個人の取引に限られます。

旅行者が知っておきたいこと

医師からひとこと

売ることは合法でも、働く人が孤立した環境に置かれる国では、性感染症の予防や検査の情報が届きにくくなります。どの国でも、性的な接触ではコンドームの使用が予防の基本です。海外での性的な接触のあとに、排尿時の痛み、性器や口のできもの、発疹などが出たら、帰国後に泌尿器科や性感染症内科を受診し、渡航先を伝えてください。

参考資料

T
Dr.Taro

性感染症内科医。YouTube「性病医 Dr. Taro」で性の健康について発信中。