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ルーマニアの性風俗事情:2014年に「犯罪」から「罰金」へ、それでも違法のままの売春

執筆・監修:Dr.Taro(性感染症内科医)|2026年10月9日

ルーマニアでは、長い間、売春は刑法上の犯罪でした。2014年2月1日に新しい刑法が施行され、売春を犯罪とする規定はなくなりましたが、売春が合法になったわけではありません。売る人は今も行政上の違反として罰金を科されることがあり、売春は「犯罪ではないが違法」という中途半端な状態に置かれています。この記事では、ルーマニアの制度と、ヨーロッパ有数の人身取引の送り出し国という問題を、欧州議会の調査などをもとに解説します。

法律の基本

「犯罪ではないが違法」の意味

2014年の改正は、売る人を刑事罰の対象から外したという点で、大きな前進とみられています。かつては売春をすると前科がつくおそれがあり、それが社会に戻ることをさらに難しくしていました。一方で、行政上の違反として罰金を科す仕組みは残ったため、売る人が取り締まりの対象であることに変わりはありません。罰金を払えない人は、さらに苦しい状況に追い込まれます。

この「半分だけの非犯罪化」は、働く人が警察に被害を届け出にくい状況を残しています。暴力や盗難の被害を受けても、届け出れば自分が罰金の対象になるおそれがあるからです。

チャウシェスク時代から

ルーマニアでは、社会主義体制のもとで売春は厳しく禁じられていました。1989年の革命で体制が崩れたあと、経済の混乱の中で、国内外での性の売買が広がりました。特に、西ヨーロッパへの出稼ぎや人身取引が大きな問題となり、ルーマニアは今もヨーロッパで性的搾取を目的とした人身取引の被害者の主な出身国の一つとされています。

人身取引の送り出し国として

欧州議会の調査は、ヨーロッパで性的搾取を目的とした人身取引に関わる犯罪組織の中に、ルーマニアの組織が含まれていると指摘しています。ルーマニアの女性たちが、恋人を装った男性に誘われて西ヨーロッパに渡り、そこで売春をさせられる、といった手口が繰り返し報告されてきました。ドイツやオランダ、イギリスなど、売春が合法または一部合法の国の市場にも、こうした被害者が入り込んでいるとされます(海外への風俗出稼ぎ)。

国内で働く場が限られ、取り締まりの対象にもなる状況が、国外で働くことを選ばせ、搾取の危険を高めているという見方もあります。

2014年の刑法が示した方向

新しい刑法は、売る人を犯罪者として扱うことをやめる一方で、あっせんをする人と、人身取引の被害者を利用した客を処罰の対象にしました。搾取する側と、搾取を利用する側に責任を求める方向です。この方向を一歩進めて、北欧モデルのように客全体を処罰するのか、それとも売る人への罰金もなくして完全に非犯罪化するのか。ルーマニアの制度は、その途中にあるといえます。

罰金が払えない人はどうなるか

欧州議会の調査によれば、罰金を払わない場合には、社会奉仕活動や代わりの拘禁が命じられることがあります。売春をしている人の多くは経済的に苦しい状況にあり、罰金を払えないことも少なくありません。結果として、「犯罪ではなくなった」はずの売春が、実際には拘禁につながりうるという矛盾が残っています。

日本との比較

日本の売春防止法は、売春を「してはならない」と定めながら、売る人や買う人を直接は処罰していません。ただし、公衆の目にふれる方法での勧誘は処罰されます。ルーマニアは、売春そのものを行政罰の対象にしうる点で、日本よりも売る人への取り締まりが直接的です。一方、人身取引の被害者から買った客を処罰する規定がある点では、日本より客の責任を明確にしています。

旅行者が知っておきたいこと

医師からひとこと

売る人が取り締まりの対象になる国では、働く人が検査や治療を受けにくく、性感染症の対策が難しくなります。どの国でも、性的な接触ではコンドームの使用が予防の基本です。海外での性的な接触のあとに、排尿時の痛み、性器や口のできもの、発疹などが出たら、帰国後に泌尿器科や性感染症内科を受診し、渡航先を伝えてください。

参考資料

T
Dr.Taro

性感染症内科医。YouTube「性病医 Dr. Taro」で性の健康について発信中。