CULTURE

スロバキアの性風俗事情:合法だが規制なし、自治体の条例で締め出される路上の売春

執筆・監修:Dr.Taro(性感染症内科医)|2026年10月9日

1993年にチェコと分かれて独立したスロバキアでは、成人どうしの性の売買そのものは違法ではありません。しかし、売春を管理する法律はなく、売春宿の経営やあっせんなど第三者が関わる行為は刑法で処罰されています。さらに、多くの自治体が条例で公共の場所での売春を禁止しており、路上で働く人は取り締まりの対象になりやすい状況にあります。この記事では、スロバキアの制度を、欧州議会の調査などをもとに解説します。

法律の基本

チェコとの比較

スロバキアとチェコは、1993年まで一つの国でした。そのため、売春に関する基本的な考え方はよく似ています。どちらも1990年前後に売春を処罰する規定がなくなり、その後、売春を管理する法律が作られないまま、「合法だが規制されていない」状態が続いています(チェコの性風俗事情)。

ただし、チェコでは国境沿いの売春施設などが目立つ形で広がったのに対し、スロバキアでは、性の売買はより目立たない形で行われているといわれます。売春を管理する法律がない中で、自治体の条例が事実上の規制の役割を果たしている点も共通しています。

自治体の条例による締め出し

国の法律が売春について定めていないため、自治体は、公共の秩序を守るという理由で、それぞれ条例を作って路上の売春を規制しています。こうした条例は、住民の生活環境を守るという目的がある一方で、路上で働く人を、人目につかない、より危険な場所に追いやる結果を招きやすいと指摘されています。

支援団体の報告では、路上で働く人の中には、ロマの人々など社会的に弱い立場に置かれた人が多く含まれているとされます。罰金や取り締まりは、こうした人たちの生活をさらに苦しくすることになりかねません。

支援団体の役割

売春を管理する法律がない国では、働く人の健康や安全を支える役割を、民間の支援団体が担っていることが少なくありません。スロバキアでも、路上で働く人を訪ねて、コンドームの配布や健康相談、性感染症の検査の案内、暴力の被害への対応などを行う団体が活動しています。国の制度がないぶん、こうした団体の取り組みが、働く人と医療や支援をつなぐ重要な役割を果たしているのです。

人身取引の問題

スロバキアは、性的搾取を目的とした人身取引の送り出し国の一つとしても挙げられています。欧州議会の調査は、ヨーロッパで性的搾取を目的とした人身取引に関わる犯罪組織の中に、スロバキアの組織も含まれていると指摘しています。国内での働き口の少なさや、社会的に弱い立場に置かれた人たちの状況が、搾取されやすさにつながっていると考えられています。

「規制がない」ことの両面

売春を管理する法律がないことは、働く人にとって、登録や強制的な検査を求められないという面もあります。一方で、労働者としての権利や社会保障の外に置かれ、トラブルがあっても法律で守られる手段が限られるという面もあります。規制がないことは、自由であると同時に、無防備であることも意味するのです。

どちらの面を重く見るかで、規制のあり方の考え方も変わってきます。

制度づくりの議論が待たれます。

今後の動きに注目です。

日本との比較

日本でも、売る人や買う人を直接は処罰せず、あっせんや場所の提供を処罰する点はスロバキアと共通しています。一方、日本では性交を伴わない性的サービスが風営法の届出制で認められ、営業できる区域も条例で決められています。スロバキアには、そうした合法的な営業の枠組みがなく、条例はもっぱら売春を締め出す方向で使われている点が異なります。

旅行者が知っておきたいこと

医師からひとこと

どの国でも、性的な接触ではコンドームの使用が予防の基本です。海外での性的な接触のあとに、排尿時の痛み、性器や口のできもの、発疹などが出たら、帰国後に泌尿器科や性感染症内科を受診し、渡航先を伝えてください。症状がなくても、気になる場合は検査を受けることをおすすめします。

参考資料

T
Dr.Taro

性感染症内科医。YouTube「性病医 Dr. Taro」で性の健康について発信中。