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トルコの性風俗事情:国が許可する「ジェネルエヴ」と週2回の公的検診、それでも閉鎖が進む理由

執筆・監修:Dr.Taro(性感染症内科医)|2026年10月9日

イスラム教徒が多数を占める国でありながら、トルコでは国の許可を受けた売春宿が合法的に営業してきました。「ジェネルエヴ(genelev)」と呼ばれるこの売春宿は、1961年に定められた規則にもとづいて管理され、そこで働く女性は登録され、週に2回の公的な検診を受けることが義務づけられています。一方で、近年はこうした売春宿の閉鎖が相次いでいるとも伝えられています。この記事では、トルコの制度を、トルコ政府の法令データベースに掲載された規則の条文などをもとに解説します。

根拠となる1961年の規則

トルコの売春宿の制度は、1961年3月30日に閣議で決定され、同年4月19日の官報に掲載された規則「ジェネル・カドゥン(登録された売春婦)とジェネルエヴが従うべき規定、および売春によって広がる性病との闘いに関する規則」にもとづいています。題名からわかるように、この規則はもともと性病対策を大きな目的としています。さらにその前には、1933年に定められた同じ趣旨の規則があり、1930年の公衆衛生法にもとづいて作られたものでした。

規則は、売春に使われる場所を、女性たちが一緒に住んで売春をする「ジェネルエヴ」、短い時間だけ使われる「出会いの場所」、女性がひとりで住んで売春をする家の3つに分けて定義しています。

働く女性に課されるルール

規則は、ジェネルエヴの経営者についても年齢などの条件を定めており、経営の許可や監督は、県ごとに置かれる委員会が担う仕組みになっています。

刑法:売春を「促す」ことは犯罪

一方、トルコ刑法227条は、売春を促したり、手助けしたりすること、売春のために場所を提供することなどを処罰しています。つまり、国の許可を受けたジェネルエヴでの売春は合法でも、それ以外の場所で売春をさせたり、あっせんしたりすれば犯罪になるのです。登録をせずに路上やホテル、インターネットを通じて性を売ることは、規則の外にある違法な売春として扱われます。

閉鎖が進むジェネルエヴ

かつてはイスタンブールやアンカラ、イズミルなどの大都市に大規模なジェネルエヴがありましたが、近年は、新しい許可がほとんど出されず、建物の老朽化や行政の方針によって閉鎖が相次いでいるといわれます。その結果、合法的な売春の場は縮小し、登録をしない違法な売春が広がっているという指摘があります。登録された女性も高齢化が進み、制度そのものが「消えつつある」状態にあるとも報じられています。

ジェネルエヴの数が減れば、週2回の検診を受ける人も減り、性感染症の対策としての役割も小さくなります。規則が想定した「管理された売春」と、実際の性の売買との間に、大きなずれが生まれているのです。

性感染症内科医から見た「週2回の検診」

週2回という検診の頻度は、世界的に見ても非常に高いものです。オーストリアの6週間ごと、ギリシャの15日ごとと比べても、はるかに頻繁です(オーストリアの性風俗事情、ギリシャの性風俗事情)。ただし、検査の頻度が高くても、感染してから検査で陽性になるまでの空白期間はなくなりません。また、1960年代に作られた制度が、HIVや梅毒、クラミジアなど現在の性感染症の検査にどこまで対応しているかは、運用次第です。

日本との比較

日本では、戦後の一時期、特定の地域での売春が事実上黙認された「赤線」がありましたが、1956年の売春防止法の制定で廃止されました。トルコは、国が売春宿を許可し、検診で管理するという制度を、今も法律の上では維持している点で、日本とは大きく異なります。一方、その制度が少しずつ縮小している点では、管理売春の時代が終わりつつあるともいえます。

旅行者が知っておきたいこと

医師からひとこと

検診を受けている相手でも、性感染症のリスクはゼロではありません。どの国でも、コンドームの使用が予防の基本です。海外での性的な接触のあとに、排尿時の痛み、性器や口のできもの、発疹などが出たら、帰国後に泌尿器科や性感染症内科を受診し、渡航先を伝えてください。

参考資料

T
Dr.Taro

性感染症内科医。YouTube「性病医 Dr. Taro」で性の健康について発信中。