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ウクライナの性風俗事情:売る人には罰金、あっせんは最大7年、戦争で高まる搾取の危険

執筆・監修:Dr.Taro(性感染症内科医)|2026年10月9日

ウクライナでは、売春は違法です。売る人は行政上の違反として警告や罰金の対象になり、売春をあっせんしたり、人を売春に引き込んだりすることは刑法で重く処罰されます。2022年に始まったロシアによる全面侵攻のあとは、国外に避難した女性や国内で生活の手段を失った人々が、性的搾取や人身取引の危険にさらされることへの懸念が強まっています。この記事では、ウクライナの制度と、戦争がもたらした状況を、法令や国際機関の資料をもとに解説します。

法律の基本

罰金の額は、法律上「非課税最低所得」という単位で定められており、売る人への罰金は比較的少額です。

旧ソ連から受け継いだ枠組み

ウクライナの行政違反法典は、旧ソ連時代の1984年に制定され、その後、改正を重ねながら使われています。売春を行政上の違反とする考え方は、ロシアなど旧ソ連の多くの国に共通しています(ロシアの性風俗事情)。ソ連崩壊後の1990年代には、経済の混乱の中で、ウクライナから西ヨーロッパやトルコ、中東などへ女性が送られる人身取引が深刻な問題になりました。

非犯罪化をめぐる議論

ウクライナでは、売る人への処罰をやめるべきだという議論も行われてきました。売る人を処罰すると、警察による恐喝や暴力の被害を届け出にくくなり、HIVなどの検査や治療からも遠ざかるという理由です。ウクライナはヨーロッパの中でHIVの感染者が多い国の一つであり、セックスワーカーを支援する団体が、検査や予防の取り組みで重要な役割を担ってきました。

一方で、国会ではポルノの非犯罪化をめぐる法案が議論されるなど、性に関する法律の見直しは進められていますが、売春そのものの扱いは大きく変わっていません。ポルノに関する法案でも、あっせんや売春への引き込み、人身取引は引き続き犯罪とされることが明記されています。

戦争と性的搾取の危険

2022年2月のロシアによる全面侵攻のあと、数百万人のウクライナ人が国外に避難し、その多くが女性と子どもでした。国際機関や各国の政府は、避難した女性が「仕事」や「住まい」を口実に誘われ、性的搾取や人身取引の被害を受ける危険があると繰り返し警告してきました。受け入れ国の側でも、避難者を狙った勧誘への注意喚起が行われました。

国内でも、戦争で仕事や家族を失い、経済的に追い詰められた人が、性の売買に関わらざるをえなくなる状況が懸念されています。戦争は、性的搾取の危険を大きく高める要因なのです。

支援団体が担ってきた役割

ウクライナでは、セックスワーカー自身や支援者がつくる団体が、HIVの検査や予防の啓発、コンドームの配布、法律相談などを行ってきました。売る人が罰金の対象になる状況では、行政の窓口に相談しにくいため、こうした団体が働く人と医療をつなぐ重要な役割を果たしています。戦争の中で活動を続けることは容易ではありませんが、避難や生活の困窮によって弱い立場に置かれる人が増える中で、その役割はさらに大きくなっています。性感染症の対策という点でも、処罰ではなく支援によって働く人とつながることが重要です。

戦争が終わったあとの社会の立て直しの中でも、働く人の健康と安全をどう守るかは重要な課題になるでしょう。

日本との比較

日本の売春防止法は、売春を「してはならない」と定めながら、売る人を直接は処罰していません。ウクライナは、売る人に行政上の罰を科す点で、日本よりも直接的に売る側を取り締まる制度です。あっせんや場所の提供を処罰する点は、日本と共通しています。

旅行者・支援に関わる人が知っておきたいこと

医師からひとこと

HIVや梅毒などの性感染症は、早く見つけて治療すれば、本人の健康を守り、ほかの人への感染も防ぐことができます。どの国でも、性的な接触ではコンドームの使用が予防の基本です。気になる性的な接触のあとは、症状がなくても検査を受けることをおすすめします。

参考資料

T
Dr.Taro

性感染症内科医。YouTube「性病医 Dr. Taro」で性の健康について発信中。