ソープランドとは:「自由恋愛」の建前、料金の仕組み、性感染症のリスク【医師が解説】
ソープランドは、日本の性風俗の中で、事実上「性交が行われる店」として知られている業態です。売春防止法で売春が禁じられている日本で、なぜそんな店が営業を続けられているのか。この記事では、ソープランドの歴史、法律上の「建前」、料金の仕組み、そして性感染症内科医として最も伝えたい感染症のリスクについて、率直に解説します。個別の店舗の紹介はしません。
トルコ風呂からソープランドへ
ソープランドの始まりは、1951年に東京・銀座で開業した入浴施設「東京温泉」に設けられた、個室で女性がマッサージなどのサービスをする「トルコ風呂」とされています。もとは蒸し風呂と入浴の介助が売り物でしたが、次第に性的なサービスを提供する店が増えていきました。1958年に売春防止法が完全施行されて赤線が廃止されると、行き場を失った需要の受け皿のひとつになったともいわれます。
1984年、在日トルコ人留学生が「自国の名前が性風俗店に使われている」と抗議したことをきっかけに、業界団体が名称を公募し、同年12月に「ソープランド」に改めました。
法律上の建前:「入浴サービス」と「自由恋愛」
ソープランドは、風営法上は「個室付浴場業」として届出をした店舗型性風俗特殊営業です。店が提供しているのは、あくまで個室での入浴のサービスであり、店として性交を売っているわけではない、というのが建前です。
では、個室の中で行われる性交はどう説明されるのか。業界でよく使われるのが「入浴サービスの中で、客と従業員が自由恋愛の関係になった」という説明です。売春防止法は「不特定の相手方」と対償を受けて性交することを売春と定義しているため、「その場で恋愛関係になった特定の相手との性交」であれば売春に当たらない、という理屈です。
もちろん、この理屈が法的に正面から認められているわけではありません。それでも長年にわたって営業が続いてきたのは、営業地域を限定して管理することで、無秩序な売春の拡散を防ぐという行政上の判断が背景にあるといわれます。ソープランドは、日本の性風俗の中で最も「グレー」な存在なのです。
営業できる場所は限られている
ソープランドの新規出店は、ほとんどの地域で条例によって禁止されています。そのため、現在営業しているのは、東京の吉原、滋賀の雄琴、札幌のすすきの、神戸の福原、岐阜の金津園など、昔から営業が続く限られた地域に集中しています(日本の風俗街の歴史と今)。
料金の仕組み
ソープランドの料金は、多くの場合、2つに分かれています。
- 入浴料:店に支払う、個室と浴場の利用料
- サービス料:従業員(「ソープ嬢」と呼ばれる女性)に支払う料金
この「店に払うお金」と「女性に払うお金」を分ける仕組みも、店は場所を提供しているだけで、その後のことには関与していない、という建前を支えるものです。利用時間は60分から120分程度が一般的で、料金の水準によって「大衆店」「中級店」「高級店」と呼び分けられています。
サービスは、入浴の介助、ローションを使ったマットの上でのサービス、ベッドでのサービスなどで構成されるのが典型的です。
働く女性たち
ソープランドで働く女性の多くは、店に雇用されているのではなく、個人事業主として店と契約しています。収入は高いといわれる一方で、体への負担が大きく、性感染症のリスクも他の業態に比べて高い仕事です。性感染症の検査を定期的に受けることを求める店もありますが、店ごとに対応はまちまちです。
性感染症内科医として伝えたいこと
ソープランドは性交を伴うため、HIV、梅毒、淋菌、クラミジア、B型肝炎、ヘルペス、尖圭コンジローマなど、あらゆる性感染症のリスクがあります。
- コンドームの有無が最大の分かれ目:店によっては、コンドームを使わないサービスをうたうところがあると報じられています。コンドームなしの性交は、自分の感染リスクを大きく高めるだけでなく、働く女性、そしてあなたの家族やパートナーにも感染を広げる可能性があります
- オーラルセックスでもうつる:コンドームを使った性交でも、オーラルセックスで淋菌、クラミジア、梅毒がのどに、のどから性器にうつります
- 梅毒の増加:近年の日本の梅毒の流行では、性風俗の利用歴のある男性の感染が多く報告されています
- 検査を受けている店でも安心ではない:検査には、感染してから陽性になるまでの空白期間(ウインドウ期)があります
利用する前に知っておきたいこと
- 相手の同意のない行為を求めることは犯罪になりえます
- 泥酔した状態で利用しない。判断力が落ち、コンドームを使わない、トラブルに巻き込まれるといったリスクが高まります
- 客引きについていかない。料金は事前に確認する
こんな症状があれば受診を
利用後に、排尿時の痛み、尿道からの膿、性器や口のできもの、手のひらや体の発疹、長引くのどの痛みなどが出たら、すぐに泌尿器科や性感染症内科を受診してください。コンドームを使わなかった場合や、使ったか覚えていない場合は、症状がなくても適切なタイミングで、性器だけでなくのどの検査、梅毒やHIVの血液検査を受けてください。HIVの感染が強く心配される場合は、72時間以内なら予防の薬(PEP)を使える可能性があります。