オーガズムとはなにか:体と脳で起きていること、男女の違い、イケない悩み【医師が解説】
オーガズム(性的絶頂)は、多くの人にとって身近な体験なのに、その中身について医学的に知る機会はほとんどありません。体の中では何が起きているのか、男性と女性で何が違うのか、「イケない」のは異常なのか。この記事では、オーガズムのしくみと、よくある悩みについて、医学的な知見をもとに解説します。
性的反応の4つの段階
性の研究の先駆けとなったアメリカの研究者マスターズとジョンソンは、1960年代に、性的な刺激に対する体の反応を4つの段階に分けて説明しました。
- 興奮期:性器に血液が集まり、男性は勃起し、女性は腟が潤い、クリトリスや小陰唇がふくらみます。心拍数と血圧が上がり始めます
- 高原期(プラトー期):興奮が高まった状態が続きます。呼吸が速くなり、筋肉の緊張が強まります
- オーガズム期:骨盤の底の筋肉(骨盤底筋)が、1秒弱の間隔でリズミカルに収縮します。強い快感とともに、緊張が一気に解き放たれます
- 消退期:集まっていた血液が引き、体がもとの状態に戻っていきます
その後の研究では、この前に「性欲」の段階を加える考え方や、特に女性では、性欲が先にあるとは限らず、親密さや刺激によって後から性欲がわいてくるという、円を描くようなモデルも提唱されています。
脳で起きていること
オーガズムは、性器だけで起きているわけではありません。脳では、快感や報酬に関わるドーパミンが放出され、オーガズムの後には、愛着や安心感に関わるオキシトシンや、満足感と関係するとされるプロラクチンが増えます。オーガズムのあとに眠くなったり、相手への親しみが増したように感じたりするのは、こうした物質の働きが関係していると考えられています。
男性のオーガズム
- オーガズムと射精は別のもの:多くの場合同時に起きますが、しくみとしては別です。前立腺の手術後などで、射精を伴わないオーガズムを経験する人もいます
- 不応期がある:射精の後は、しばらく次の勃起やオーガズムが起きにくい時間(不応期)があります。年齢とともに長くなる傾向があります
女性のオーガズム
- クリトリスが中心:クリトリスは、体の表面に見える部分はごく一部で、内部では腟を両側から包むように広がった大きな器官であることが、画像研究で明らかになっています
- 腟への挿入だけで達する女性は少数派:多くの女性は、オーガズムにクリトリスへの直接的な刺激を必要とします。かつて言われた「腟でイクのが成熟した女性」という考えには、医学的な根拠はありません
- 不応期がない人も多い:女性は、続けて何度もオーガズムに達することができる人もいます
「オーガズム・ギャップ」
アメリカの大規模な調査では、約5万2千人を対象にした2018年の調査で、親密なパートナーとのセックスで「たいていオーガズムに達する」と答えたのは、異性愛者の男性で95%だったのに対し、異性愛者の女性では65%にとどまりました。一方、女性を好きな女性(レズビアン)では86%と高い割合でした。この差は体の問題ではなく、セックスの中身、とくにクリトリスへの刺激が十分かどうかによるところが大きいと考えられています。
イッたふりをする人は多い
調査では、多くの女性が、そして一部の男性も「イッたふり」をした経験があると答えています。相手を傷つけたくない、早く終わらせたいといった理由が多いようです。しかし、ふりを続けると、相手は「このやり方でいいのだ」と思い込み、本当に気持ちいいセックスから遠ざかってしまいます。何が気持ちいいかを言葉で伝えることが、いちばんの近道です。
イケない、イキにくいという悩み
オーガズムに達しにくいことは、珍しくありません。原因はさまざまです。
- 刺激の種類や時間が合っていない:最も多い原因です。マスターベーションで自分に合った刺激を知ることが役立ちます
- 心理的な要因:緊張、不安、罪悪感、パートナーとの関係のストレス
- 薬の副作用:うつ病などに使われる抗うつ薬(SSRIなど)は、オーガズムを起こりにくくすることがよく知られています
- 体の病気:糖尿病などによる神経の障害、ホルモンの変化、骨盤の手術の影響など
- 男性の場合:強い刺激のマスターベーションに慣れたことで、腟内で射精できなくなる(腟内射精障害)こともあります(マスターベーションの誤解)
反対に、男性では射精が早すぎること(早漏)に悩む人も多く、こちらも治療の対象になります。
こんなときは受診を
以前はオーガズムに達していたのに急に達しにくくなった、薬を飲み始めてから変化があった、オーガズムのときに痛みがある、といった場合は、婦人科、泌尿器科、あるいは処方を受けている医師に相談してください。薬が原因であれば、種類や量の調整で改善することがあります。自己判断で薬をやめるのは危険なので、必ず医師に相談してください。オーガズムの悩みは、医療で相談してよい、れっきとした健康の問題です。