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香港の性風俗事情:「一楼一鳳」は合法、2人いれば「売春宿」、おとり捜査が問題になる街

執筆・監修:Dr.Taro(性感染症内科医)|2026年10月9日

中国本土では売春が全面的に禁止されていますが、「一国二制度」のもとで独自の法律を持つ香港では、事情が異なります。香港では、成人がひとりで自分の部屋で性的サービスを提供することは、それ自体は違法ではありません。このような形は広東語で「一楼一鳳(ひとつの部屋にひとりの鳳)」と呼ばれています。一方で、2人以上が同じ場所で働けば「売春宿」とみなされ、公共の場所での勧誘も犯罪です。この記事では、香港の制度と、国際人権団体が問題視した取り締まりの実態を、アムネスティ・インターナショナルの調査報告などをもとに解説します。

法律の基本

ひとりで働くことを強いる法律

「2人以上なら売春宿」という規定は、イギリスの植民地時代から続く考え方で、イギリスやアイルランド、シンガポールにも見られます(イギリスの性風俗事情、シンガポールの性風俗事情)。この規定のもとでは、セックスワーカーは安全のために仲間と一緒に働くことができず、ひとりで見知らぬ客を部屋に迎え入れなければなりません。アムネスティ・インターナショナルは2016年の報告書で、この規定が働く人を孤立させ、強盗や暴力の被害を受けやすくしていると指摘しました。

おとり捜査をめぐる問題

アムネスティの報告書が特に問題にしたのは、警察のおとり捜査のやり方です。報告書は、次のような実態を紹介しています。

アムネスティは香港政府に対し、セックスワーカーを処罰する法律の廃止と、強引な捜査の禁止を求めました。

中国本土から来る人たち

香港で働くセックスワーカーの中には、中国本土から観光などの短期の資格で入境し、性的サービスを提供する人も少なくありません。こうした人は、就労が認められていない在留資格で働いているため、入境管理の違反として逮捕されます。アムネスティの報告書によれば、2014年には、性的サービスに関わったと疑われる中国本土からの4039人が、入境に関する違反で逮捕されました。在留資格の違反が、事実上セックスワークを取り締まる手段になっているのです。

香港の性感染症対策

香港では、政府の衛生署が「社会衛生科」の診療所を運営し、性感染症の検査や治療を無料または低額で提供してきました。セックスワーカーを支援する民間の団体も、健康相談やコンドームの配布、法律相談などを行っています。売春に関わる行為が取り締まりの対象になる中で、こうした窓口が働く人と医療をつなぐ役割を果たしています。

「ひとりなら合法、2人なら違法」という線引きは、働く人の安全よりも、売春を目立たせないことを優先した考え方だといえます。

日本との比較

香港と日本は、売春そのものよりも、勧誘や売春宿、あっせんを処罰する点で似ています。日本の売春防止法も、公衆の目にふれる方法での勧誘や、売春をさせる場所の提供を処罰しています。違いは、香港では「ひとりで部屋で働く」ことが明確に違法ではないとされている点です。日本では、そもそも売春は「してはならない」とされ、合法的に性的サービスを提供できるのは、性交を伴わない範囲で風営法の届出をした業態に限られます。

旅行者が知っておきたいこと

医師からひとこと

どの国・地域でも、性的な接触ではコンドームの使用が予防の基本です。海外での性的な接触のあとに、排尿時の痛み、性器や口のできもの、発疹などが出たら、帰国後に泌尿器科や性感染症内科を受診し、渡航先を伝えてください。

参考資料

T
Dr.Taro

性感染症内科医。YouTube「性病医 Dr. Taro」で性の健康について発信中。