CULTURE

カザフスタンの性風俗事情:売ることは犯罪でない、でも2024年からネット上の性的サービスも規制の対象に

執筆・監修:Dr.Taro(性感染症内科医)|2026年10月9日

中央アジア最大の国カザフスタンでは、成人が性を売ること自体は犯罪とされていません。一方で、売春に人を引き込むことや、売春宿の経営、ポン引きなどは刑法で処罰され、公共の場所での勧誘は行政上の違反とされています。2024年には人身取引対策の法律が制定され、インターネットなどを通じて遠隔で提供される性的サービスも、刑法の規制の対象に加えられました。この記事では、カザフスタンの制度と最近の変化を、法令や報道、米国務省の報告書をもとに解説します。

法律の基本

2024年の人身取引対策法

2024年7月に署名され、同年9月に施行された人身取引対策の法律は、刑法に「その他の性的サービス」という概念を新たに加えました。報道によれば、これは、金銭的な利益のために性的な欲求を満たす行為を指し、インターネットなどの通信ネットワークを通じて遠隔で行われるものも含むとされています。

この改正によって、ネット上での性的サービスの提供への引き込みや、ウェブカメラを使った性的サービスの組織、人を勧誘する目的での広告なども、処罰の対象になりました。インターネットを通じた性的搾取、特に未成年の被害が増えていることに対応したものです。

人身取引の対策

米国務省の人身取引報告書は、カザフスタンが、中央アジアの近隣国から人が送られてくる人身取引の受け入れ国であり、同時に送り出し国でもあると指摘してきました。報告書は、売春への引き込みの罪が、比較的軽い刑罰しか定めていないため、人身取引の事件がこの罪で起訴されると、加害者が十分に処罰されないことがあるという問題も指摘しています。2024年の法律の制定は、こうした指摘に応える意味も持っています。

旧ソ連の国々の中で

旧ソ連の国々の多くは、売春そのものを行政上の違反として、売る人を処罰する制度をとっています(ロシアの性風俗事情)。これに対してカザフスタンは、売ること自体は犯罪とせず、公共の場所での勧誘や、第三者の関与を処罰するという形をとっています。隣国のキルギスも、1998年に売春を処罰する規定をなくしています(キルギスの性風俗事情)。

HIVと性感染症

中央アジアは、世界の中でもHIVの新たな感染が増えている地域の一つとされてきました。注射による薬物使用と並んで、性的な接触による感染も広がっています。セックスワーカーを対象にした予防や検査の取り組みは、国際的な支援も受けて行われていますが、取り締まりへの不安が、働く人を医療から遠ざける要因になりうることは、ほかの国と同じです。

ネット規制の課題

インターネットを通じた性的サービスを規制の対象にすることは、未成年の性的搾取や人身取引を防ぐうえで重要な意味を持ちます。一方で、規制の範囲があいまいであれば、自分の意思でネット上で働く成人まで取り締まりの対象になるおそれもあります。ネット上の搾取を防ぎながら、表現やプライバシーを不当に制限しないよう、法律をどう運用するかが今後の課題です。

新しい規定がどのように使われていくのか、注目されます。

人身取引の被害者を見つけ出し、保護する体制の強化も、引き続き求められています。

今後の運用が注目されます。法律の効果の検証も必要です。

日本との比較

カザフスタンと日本は、売る人を直接処罰せず、勧誘や売春宿、あっせんを処罰する点で、構造が似ています。2024年にネット上の性的サービスを規制の対象にした点は、インターネットを通じた性の売買や搾取にどう対応するかという、日本を含む多くの国に共通する課題への一つの答えだといえます。

旅行者が知っておきたいこと

医師からひとこと

どの国でも、性的な接触ではコンドームの使用が予防の基本です。海外での性的な接触のあとは、症状がなくてもHIVや梅毒の検査を受けることをおすすめします。気になる症状が出たら、帰国後に泌尿器科や性感染症内科を受診し、渡航先を伝えてください。

参考資料

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Dr.Taro

性感染症内科医。YouTube「性病医 Dr. Taro」で性の健康について発信中。