CULTURE

マカオの性風俗事情:カジノの街で売春は合法、それでも勧誘と組織は犯罪

執筆・監修:Dr.Taro(性感染症内科医)|2026年10月9日

世界有数のカジノの街として知られるマカオは、香港と同じく中国の特別行政区で、中国本土とは異なる独自の法律を持っています。マカオでは、成人が個人として、私的な場所で性的サービスを提供すること自体は違法ではありません。しかし、客の勧誘や、売春の組織化、他人の売春からの搾取は犯罪とされています。この記事では、カジノと観光の街マカオの制度を、マカオ政府の法令や報道をもとに解説します。

法律の基本

カジノと性産業

マカオはポルトガルの統治を経て1999年に中国に返還され、2000年代にはカジノの規制緩和によって世界最大級のカジノの街へと成長しました。多くの観光客や賭博客が訪れる中で、ホテルやサウナ、ナイトクラブなどを舞台にした性の売買も広がり、一部のカジノホテルの周辺では、客を待つ女性の姿が目立つことが報じられてきました。

マカオの警察は、ホテルの中で売春を組織していた犯罪組織を摘発するなど、組織的な売春の取り締まりを強化してきました。2015年には、大手ホテルの中で営業していた大規模な売春組織が摘発され、大きな話題となりました。中国本土からの観光客の増加とともに、本土から短期の資格で来て性的サービスを提供する人も多いとされ、在留資格の違反として取り締まりの対象になっています。

香港・中国本土との比較

同じ中国の特別行政区である香港とマカオは、どちらも、個人が私的な場所で性を売ること自体は違法としない一方で、勧誘や組織化を処罰する点で似ています(香港の性風俗事情)。これに対して、中国本土では売春は全面的に禁止され、売る人も買う人も行政罰の対象です(中国の性ビジネス)。同じ国の中でも、地域によって法律がまったく違うのです。

合法化をめぐる議論

マカオでは、性の売買を合法化して管理すべきかどうかという議論も、地元の経済紙などで取り上げられてきました。観光とカジノに依存する経済の中で、性産業をどう位置づけるかは、街のイメージや治安、公衆衛生にも関わる問題です。現在のところ、個人の売春は違法としないが組織化は取り締まるという枠組みが続いています。

取り締まりと人身取引

マカオの性産業で働く人の多くは、中国本土や東南アジアなど、マカオの外から来た人だとされています。仕事の内容をだまされて連れてこられたり、借金を背負わされたりして、売春を強いられる人もいます。米国務省の人身取引報告書も、マカオで性的搾取を目的とした人身取引が起きていると繰り返し指摘してきました。取り締まりの対象が、売春を組織する側ではなく、在留資格の違反として働く人自身に向かうと、人身取引の被害者が見過ごされるおそれがあります。被害者を見つけ出し、保護する仕組みが重要です。

性感染症の対策

マカオでは、政府の衛生当局が性感染症の検査や相談の窓口を設けています。性の売買が個人の取引として行われ、働く人の多くが短期間で入れ替わる状況では、働く人と医療をつなぐことが難しくなります。観光客の側も、旅先での性的な接触によって性感染症に感染するリスクを知っておくことが大切です。

返還前の歴史

ポルトガルの統治下にあった時代のマカオでは、売春は長く存在し、港町として、また賭博の街として、性の売買が街の歴史の一部となってきました。1999年の中国への返還後も、マカオは独自の法律を維持し、中国本土とは異なる扱いを続けています。カジノの街の発展とともに、性産業のあり方も変わってきたのです。

日本との比較

日本でも、統合型リゾート(IR)としてカジノを含む施設の整備が進められています。カジノの街マカオの経験は、観光と性産業の関係、組織犯罪への対策、人身取引の防止など、日本にとっても参考になる点があります。法律の枠組みでいえば、マカオも日本も、売春そのものより勧誘や組織化を処罰の中心に置いている点で共通しています。

旅行者が知っておきたいこと

医師からひとこと

どの国・地域でも、性的な接触ではコンドームの使用が予防の基本です。海外での性的な接触のあとに、排尿時の痛み、性器や口のできもの、発疹などが出たら、帰国後に泌尿器科や性感染症内科を受診し、渡航先を伝えてください。

参考資料

T
Dr.Taro

性感染症内科医。YouTube「性病医 Dr. Taro」で性の健康について発信中。